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SF・ファンタジー・ホラー

サクリファイス クロニクル編6

   

売れない作家に人探しの為、自らの物語を新聞へ掲載して欲しいと頼むシャルル。作家は興味本位でその頼みを受けるが、そこには壮絶かつ悲しい内容が待っていた。

時を遥かに遡り、15世紀からそれは始まる。
魔女狩り、ペストに怯える暗黒時代の中、シャルルに唯一許されたのは舞台の上で女を演じることだけ。

だが、シャルルもまたペストに侵されてしまう。

独り死を待つシャルルの元に、かつて魔女狩りで焼かれた幼馴染みのソバッカスが姿を現した。

ソバッカスの姿に安心して死を迎え入れたシャルルは、ソバッカスの誕生日の日を夢に見る。
それはシャルルが悔やんでも悔やみきれない、ソバッカスへの想いだった。

 

 見慣れた銀のロザリオを胸元で揺らし、ソバッカスが僕の部屋に入ってきた。僕は彼女を、用意していた椅子に座らせた。
「ソバッカス、顎を上げて、髪を分けて顔を出して」
 ソバッカスは、顔を赤くさせながら膨れて言った。
「私には、リュリュって名前があるのに! シャルルは、いつになったら名前で呼んでくれるのよ」
 僕は、笑ってしまった。
「もう! 笑わないで。毎日朝露で顔を洗って、そばかすも殆ど見つけられなくなったんだから」
「そうだね、そんな綺麗な顔を描こう」
 僕はオークの板と木炭を、ソバッカスの顔の前に掲げた。
「うーん、やっぱり横顔にしようかな」
 お金のない僕は、幼馴染みのソバッカスの誕生日に、いつも野花をプレゼントしていた。けれど、今年は違うものを贈りたくて、彼女の絵を描くことにした。ソバッカスは花でもいいと言ってくれたけど、僕は今年のソバッカスの誕生日には彼女の絵を描いて贈ると決めた。もう、まもなく会えなくなる事を、どこかで予期していたのかもしれない。
「ねぇ、シャルル」
 ソバッカスの横顔を描いている途中、彼女が弱々しく呼んだ。
「ん?」
「あのね、私ね、この前……男の子に好きだって言われたの」
 僕は、少し驚いた。
「ソバ……リュリュも、もう大人なんだね」
 僕の中に、少し寂しい気持ちが生まれた。
「シャルルは、私がいなくなる事、考えたことない?」
 僕は、手を止めた。
「何で?」
 ソバッカスは、少し言葉に迷ったように顔を俯き、また同じ姿勢に戻った。
「魔女狩りもあるし、ペストもあるじゃないの! この悪魔。早く描きなさいよ」
 僕は「あぁ」とだけ発し、再び彼女の横顔を描き始めた。
 暫くの沈黙。破ったのは、ソバッカスだった。
「ねぇ、シャルル」
「ん?」
「シャルルの誕生日に、私貴方に大切な事を話すわ」
「大切な事?」
「うん。もし私が魔女狩りとかペストに遭ってしまったら、ママに頼むわ。だから、それまでシャルルは、今までと同じように私と一緒に居てね」
 僕は、いつもと違って弱気な彼女を少し心配になった。
「ソバ……リュリュ。どうしたの? 勝ち気で男勝りで元気なソバ……リュリュ戻っておいで」
 ソバッカスは、呆れたように言った。
「もう、ソバッカスで良いわよ。シャルルの馬鹿。バカバカバカバカ、鈍感、馬鹿」
「ソバッカス、言いたい事があるならいつもみたいにハッキリ言いなよ。らしくないよ。折角の誕生日なんだし」
 ソバッカスは立ち上がり、僕の部屋を飛び出していった。ソバッカスの横顔の絵はまだ途中で、あと少しで完成だった。
 僕は、ソバッカスの後を追い掛け外に出た。しかし、足の速い彼女の姿は既になく、ソバッカスを探すハメになってしまった。
 太陽が夕焼けに向けて傾いて来た頃、やっとの事でソバッカスを見つけた。村はずれの楢の木の下で、彼女は膝を抱えて俯いていた。
「ソバッカス、やっと見つけた!」

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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