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ラブストーリー

ふたりの生活:三話

   

食後、家主からウノに付き合わされる。
しかし、このウノはただのゲームではなくて……。
家事当番を決めるのに、ゲームをするなどありえないっ!
あ然としながら勝負に挑む羽澄であった。

 

 食事後のリラックスタイムは自分の部屋で過ごす。目を覚ませば二十二時はとっくにまわっていた。
 いつの間にか熟睡してしまったのだろう。むくりと起き、ぼんやりした意識を回復させようと努力するが、後頭部がやけに重い。
 もう一眠りをして、アンニュイな気持ちを吹き飛ばそうかな。また横になると、視界には栗の皮色のモジャモジャが視界に入る。
 手を伸ばし、その物体を撫でてみる。やけに硬い毛は、指の腹に刺さってしまいそうだ、と肌触りから認識。
 ここの家ではペットでも飼っているのかも。通されなかった部屋には、小熊サイズの動物が存在して、規則的な時間に餌付けをする。
 あの男性には考えられないから却下。監禁や、危険な事柄に首を突っ込んでいるとか。
 興味が湧いても、干渉のし過ぎはかえってギスギスした生活に陥りやすくなる。なにがあっても素知らぬ振りをしていく、それが妥当かつ適切な判断かな。
「……あのさぁ、いつまで髪を撫でている? いい加減、むず痒くて気が散って読書の妨げになる」
 声の主は私の腕を掴んで、ベッドの縁に腰を下ろした。
 目脂が付いた瞼を擦って顔を上げると、共に夕食をとっていた男性の姿があった。
 昼間よりも力は入っていないが、掴まれた腕は指圧によってちょっと痺れている。
「羽澄、風呂に入らず眠るな。せっかく一番風呂を提供するつもりだったが、お前の仮眠でぶち壊しだ。ほら、起きて湯船に浸かってこいよ」
 私の身体を起こしながら、男性は呆れ顔でわたしを見据えた。男の視線は、呆れと無気力が混じり合って、平然さを醸し出している。
 どうも男は世話を焼いてくれているみたい。さっきまではわたしに頓着せず、気儘に接していたくせに、数時間で心変わりしたのか。
 なんにしろ、男性のご好意を素直に受け入れるのが適確な判断となる。
「起きます。起きて、お風呂に入って寝ます。なので手を放して、ちょっと痛い、です」
 男性はわたしの顔から掴んでいる腕へと視線を落とした。なにかを思い出したように腕を解放し、立ち上がって扉の前にて半回転する。
「あぁ、そうだな。入浴後は居間に来い。ちょっとだけ付き合ってもらうことがある。分かったな」
 疑問符を浮かべてはいない。まるで、母のような命令口調。今後の生活、先が思いやられるよ、と、瞼を閉じながら息を漏らす。

 

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