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ラブストーリー

Love cannot be compelled 10

   

信長の帰りが遅い。不安なまま部屋で一人泣き出してしまった蘭は、信長が帰って来た瞬間にその不安から解放された。
だが翌日、出勤しようとマンションを出た二人を待っていたのは、薄ら笑いを浮かべた週刊誌の記者だった…。

 

 テレビをつけながら信長の帰りを待っていた蘭は、壁掛け時計を見上げて溜息吐いた。もう九時を回っている。エリカが終わらせると言っていた話も、きっと長引いているのだろう。それは理解出来ている。
 ただ、一人の時間が長すぎて、蘭は考えたくない事ばかり考えてしまっていた。
 再び悟が姿を見せたという事は、何かが起こる気がしていた。
 あのコーヒーショップで囁かれた言葉が蘇る。
『部屋を綺麗に……』
 その言葉は現実にならなかったが、今日会社を出てからついて来ていたという事は、また何かを企んでいるのだろうという事は、安易に想像がついた。
(飯田さんは、部屋番号まで知らないって言ってたけど……。なんか、今までの事を考えると、部屋番知る事なんて鈴村君には簡単なように思える……)
 そう考えてから身震いした。
 もしも本当に知られたとしたら、ここのドアを開けに来るのかもしれないという不安が、蘭の顔を青褪めさせた。
 いつものように信長がいたのなら、そんな不安もすぐに消えるのだが、今はまだ信長がいない。不安になっていく心は抑えきれなくて、蘭はクッションを抱き締めてしゃくりを上げだした。
 その時、玄関が音を立て始めて、蘭の体が激しくビクついた。
「蘭っ!!」
 ガタガタと音を立ててリビングに飛び込んで来たのは、物凄い形相で息を切らした信長だった。その姿を見た瞬間、クッションを放り投げて信長に抱きついた。
「ぅっ…、おかっ…えりっ……」
 泣きながらも言葉を掛けると、すぐに信長の手が蘭の顎を掴み、唇を触れ合わせてきた。それに夢中で応えていると、強い力で抱き締められて、蘭が安心したように首筋に顔を埋めた。
「飯田から聞いた。何もなかったな?」
 息を整えながら、信長が声色低く聞いた。
「うん、ない……。信長、…おかえり……」
 小さな声で呟きながら、蘭は首に巻きつかせた腕に力を込める。
 本当は怖くて、あの時すぐにでも信長に側に居て欲しかった事を、その腕の力に込めた。
「遅くなってすまない……。愛してる、蘭」
 ゆっくりと背を擦りながら、信長はもう一度蘭に口付けた。
 落ち着きを取り戻した蘭は、目を擦ってからニッコリと笑った。
「ご飯、作っておいた。食べよう」
「あぁ」
 信長から手を引いてキッチンに入ると、作っておいた料理を温め直してテーブルに運んだ。
「飯が終わったら、直ぐに風呂に入る。そしてすぐにベッドだ」
 イスに腰掛けながら上着を脱ぎ捨てた信長は、ニヤリと意味深な笑みを浮かべた。その意味に直ぐ気付いた蘭は、顔を真っ赤にしながら唇突き出して、熱くなった顔を手で仰いでいた。

 

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