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歴史・時代

薔薇と毒薬 16

   

「……嘘だ!」
 ノイッシュは首を振った。けれど否定しきれなくなっている自分に気づく。そんなノイッシュに、エーベルが、小さな菓子の包みを見せた。
「解毒剤の原料をごく少量混ぜた砂糖菓子だ。効果は数時間程しかもたないが、もしオルゴールの体調不良が毒に由来するものであるなら、すぐに効き目は現れる」

 

 熱を出して倒れたマリエットを迎賓館まで送り届け、ノイッシュが離宮に戻ると、セレスタン家の兄妹が訪れていた。
「珍しいな、離宮まで来るなんて」
「宮殿ではしにくい話だったのでな。そんなことよりどこへ行っていた」
「日課の散歩だよ。そこでマリエットに会った」
「オルゴールに? 彼女は体調を崩して伏せっているのではなかったのか」
「そう聞いていたが、偶然湖畔に彼女がやってきて、けれどやはりまだ本調子ではなかったみたいだ。熱を出して倒れてしまい、迎賓館まで送り届けてきた。……何かあったのか?」
 テーブルの上では、ノイッシュがいない間にエーベルたちに出されていた紅茶が、口もつけられずに冷め始めていた。
「三週間ほど前に、何者かに離宮が襲撃された件について、ずっと調べていた」
 そうノイッシュに言うエーベルの表情は、硬い。そして続けてその口から出たのは、思いも寄らぬひとことだった。
「ノイッシュを襲ったのは、オルゴールではないのか?」
「なっ……」
 あまりに唐突なエーベルの言に、ノイッシュは一瞬、返す言葉を失った。
「近頃宮内でも噂になっている。オルゴールが王子に近づいていると。俺も心配していた。ノイッシュがオルゴールに誑かされているのではないかと」
「違う、彼女を誘っているのは僕の方だ!」
 思わずノイッシュは、ソファから腰を浮かせて叫んだ。そんなふたりのやりとりを、ファナはおろおろしながら見ている。

 

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