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ラブストーリー

ふたりの生活:四話

   

月曜の朝、羽澄は直との朝食を用意し、バイト先に向かった。
週の初めだから、社内も慌しい。
そんな中、羽澄は社内でとある人物との邂逅を果たす。

 

 月曜日。
 アルバイト先の企業に間に合うように起床する。
「七時十五分。準備とかを含めて、一時間後に出られるようにしよう」
 眠い目を擦って、準備を始めた。髪の毛を後ろでシニョン風に纏め、用意したカットソーとデニムスカートを身につける。
 二人暮らしはある意味で楽だなぁ、なんて思う。
 例えば料理。レシピに記載されているのは、大抵二人分か四人分。一人分を作る際は、四人分から一人分の量を出すため、電卓をたたいて計算することもある。
 二人分になると単純に二で割るだけで、電卓を持ち出すことはない。それに、レシピに書かれていることが多い。
 計量カップと睨めっこするケースも格段と減る。失敗し、材料を無駄にすることも少なくなる。
 あぁ、素晴らしきかな二人暮らし。
 気掛かりとまではいかないけど、一つ屋根の下で暮らしている相手が赤の他人であること。普通の人間なら、あまりにも気を遣って気疲れを起こしそう。
 この家の主である千川さん曰く『干渉はいらないが分担された家事だけはしろ』だってさ。
 わたしのことは女として見ていないので、安心している。その反面、使用人として扱われそうな気もしないでもない。
 あ、重複否定文だ。
 簡単に言えば、召使いにされそう、その一言に尽きる。
「ふあぁ……あぁ、おはよう。少し、早過ぎないか」
 ボサボサヘヤーのままやってきたのは、千川さんだ。昨晩は九時頃に別れて部屋に戻ったから、十時間振りに顔を合わせたことになる。
 そうそう、廊下を隔てた彼の部屋からは真夜中までクラシックが響いてきた。何時頃まで彼の意識があったのか、興味がある。
 お互いに深入りをすると、後々の生活が息苦しくなる。ここは思い留まるだけで、手を動かしておこう。
「おはようございます。もう少しで朝ご飯ができますので、準備をしておいて下さい」
「……あれ、お弁当を作っているの?」
 千川さんはお弁当を詰めている姿を覗き込んできた。
「はい。インターンで昼食代も戴いているのですが来週からはアルバイトに切り替わりますので、お弁当作りを習慣化させようかと」
「あぁ、そうなの。おかずは昨日の残りに焼き魚、ひじきの煮物ね。大学生とは思えない質素なメニューだな」
「放っておいて下さい。所詮、あまりものですから。あ、そうだ」
 振り向いて、眠そうな顔の千川さんに注目する。
 忘れていたことがあった。生活費について、どうなるのか。重要かつ重大な話題なのに、頭の中からすっぽ抜けていた。
「忙しない朝だ。その話題はまた夜にでも振るのが適確だろう。俺は準備をするから、お前は居間に料理でも運んで待っていろ」
 あくびをしながら、千川さんは台所を後にした。ポツンと一人残されたわたしは、調理を再開する。
 彼の話すことも一理ある。無駄な立ち話は、時間を消費させるだけ。
 詰め終わったお弁当に封をし、手間を抜いた料理を運ぶ。千川さんは未だ支度に手間暇をかけている。

 

-ラブストーリー


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