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ラブストーリー

Love cannot be compelled 11

   

連れて来られた部屋。
そこから出る事も出来ないと分かって、二回目の朝を迎えた。
悟は、ただ食事を作りに来る。
それをぼんやり見ているだけの蘭。

その日、部屋から出て行こうとした悟が、突然部屋に倒れこんできた…。

*最終章になります。

 

 一体何回朝を迎えただろうかと、ふと蘭はベッドの上で小首を傾げた。
 まだ二回だっただろうかと、ぼんやり思っていると、玄関が音を立てた。悟が来たのだ。
「先輩、お早う御座います」
 悟は、ここへと蘭を連れて来てから、特に何かをするわけではなかった。ただ、鍵は中から開けられない仕組みになっていて、外側からしか閉めるも開けるも出来ない。要するに、蘭は部屋から出られないのだ。
「朝食作りますね。お腹減ったでしょう?」
 当たり前のように朝早く来て、朝食を作ってから仕事に出かけていく。それをただ黙って蘭は見ていた。今日もそうして悟が仕事に行こうとした時、玄関が大きな音を立てた。
 蘭が、なんだろうとゆっくりと玄関の方を見やると、いきなり悟が飛ばされて来た。それに驚いて、蘭は壁に張り付いて玄関を凝視した。
「ぶっ殺してやる……。許さねぇ……」
 部屋の中に入って来たのは信長だった。鬼のような形相で、床に倒れこんでいる悟を見下ろして、足を振り回した。それが顔に当たり、悟が呻いて蹲る。その姿を見た瞬間、蘭の感情が一気に動き出した。
 激しく鳴り響く鼓動。溢れ出てくる涙。
「蘭は…、俺のだ……。誰であろうと…、やるつもりは無ぇんだよっ!!」
 叫んで悟を何度も踏みつける。その度に悟の呻き声が小さく漏れてきた。そして信長が息を切らして足を止めると、グッタリしている悟を見下ろしてから、ゆっくりと蘭へ視線を向けた。
「蘭…、蘭っ……」
 苦しげな表情を浮かべて、倒れこむようにして蘭を抱き締めた信長。その腕に包まれた時、信長を疑った事に物凄く罪悪感が生まれた。
(そうだった……。最初に言われてたはずなのに……)
 『誰に何を言われても、俺を信じろ』と。
 勝手にスクープにされると、千穂が言っていた事も思い出す。それがこの事なのかと、蘭は信長の背にそっと腕を回した。
「蘭、帰るぞ」
 その腕を感じて直ぐに蘭を抱き上げた信長は、未だ呻いている悟を睨み付けた。
「警察に突き出すのは勘弁してやる。ただし、これ以上蘭に近づいた場合、直ぐに訴えるから、そのつもりでいろ。それから…、蘭の鞄に仕込んだ盗聴器も既に壊してある。二度と、その面(ツラ)見せんじゃねぇぞ」
 声色低くそう言い放つと、部屋を出て車に蘭を乗せた。
 運転席に体を滑り込ませた信長は、直ぐに蘭に抱き込み口付けた。噛み付くように何度も唇を食み、舌を絡ませ頬を撫でる。そして、強く抱き締めた。
「……いなくなるなっ。俺の前からっ…、いなくなるなっ……」
 苦しげな声が聞こえて、蘭は顔を歪ませながら泣きじゃくった。
 どうしてこの男をちゃんと信じてやれなかったのか、自分自身を恨んだ。

 

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