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ラブストーリー

ふたりの生活:七話

   

酔っ払って帰宅した直を介抱する羽澄。
随分気分が良いのか、羽澄に抱きついてきた。
横暴な態度をとる直に対し、羽澄は……。

 

 店舗からの電話の対応は特になく、机の中でも仕事が見当たらなかった。仕方がなく、自分の分担外の伝票まとめをおこなう。
 これ以外にも仕事はないかと上司に問えば、ゆっくりつくろげ、それが返答。
「わたし、土曜日に出社してもいいのですか?」
「一応居てもらわないと、ね。毎週でなくとも隔週でいいし。月島はアルバイト代を稼ぎたいのなら、増やす方がいいだろう? それとも、店頭に出る?」
「い、いいえ! わたしに販売は無理、ですよ。うちのチームって大体大きい直営店に回されるのですよね。そこに千川さんがいたら気まずさが半端ないです」
「あぁ、それか。私としてはその気まずさを目を細めながら堪能したいけど、断られたのなら諦めるしかない。その代わり、毎週の順位表を届ける係りを月島にして、二人が鉢合った場面でもニヤニヤしながら観察するか」
 わたしに満面の笑みで振りまく土浦さんに、一つまみの怒りを抱いたのは今日が初めてだった。
 インターンの頃も酷かったけど、千川さんとの同居を弱みとして握られている。こっちとしても生活がかかっているので抗えないのに涙目だ。
 定時に会社を出ようとエレベーターに乗り込んだ。七階から真っ直ぐ一階へ降りるのかと思いきや、二階で停止する。
 半畳分の空間が開けば、一人の男性社員がドアの前に立っていた。
「あっ」
 声を上げたのはわたし。相手は口を小さく開いただけで、声にはしなかった。
 本来、店に出ているはずの千川さんが本社にいたのか。不思議でならなかったけど、仕事を残してきたぐらいは予想できる。
 エレベーターから降りても、会社を出ても会話はない。部署が違うとここまで話が進まないのか、どんよりとした空気の中、目指すのは最寄駅であった。

 

-ラブストーリー


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