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ラブストーリー

先生 第三回 追憶その2

   

昭和51年2月、雪の夜、私は先生と神社に合格祈願に出掛け、そこで初めてのキスをした。

そして3月、私は第一志望の大学に合格し、先生と初めてのデート「合格祝い」に出掛け、その帰り道、先生がご主人とのことで苦しんでいるのを知った。

 

昭和51年

三学期、悲しみを乗り越え、授業再開。

1月5日(月)
「俊君、数学は大分実力をつけたけど、英語とか他の科目はどうなの?」
「まあまあですね。ちょっと現代国語が苦手なんで、頑張らなければと思っています。」

もう少しの頑張りよ。

1月7日(水)、壮一さんからニューイヤーカードが来た。
 でもどんなことをしているか書いていない。どうしているんだろう。寂しい。

1月21日(水)、最後の模擬試験の結果が分かった。
合格圏内に入ったが、でも最後までわからない。
塾長先生に誓ったように俊君を合格させたい。

2月1日(日)、いよいよ国立大学の願書受付が始まる。
願書を郵送する前に、“どうか合格させて下さい。”と祈ってね、俊君。私も祈るわ。

2月2日(月)試験まで後1ケ月。
「俊君、雪が降り出したね。寒いね。風邪ひかないでね。」
「先生、明日願書出すので、天祖神社に最後のお願いに行こうと思うんですけど、一緒に行ってくれます?」
「これから?」
「うん。」
「いいわ、行きましょう。」

天祖神社は進学教室から5分ほどのところにある氏神さま。

外は雪が降り続いている。私たちは何もしゃべらず並んで歩いて行きました。

夜の10時近かったので、境内には人影がなく静まりかえっていました。私たちは二人並んで社殿の前で手を合わせました。

先生は私の横で目をつむり

  早川俊を合格させて下さい。

とじっと祈ってくれていました。

  お父さん、頑張りますから見守っていて下さい。

私は小さな声でそうつぶやきました。

その声を聞いて、先生は私の顔をじっと見つめ、先生の瞳には涙が溜まっていました。そして私の手を握ってくれました。

悩んでいる時、俊君の優しい心遣いにどれだけ支えられたか、その感謝の気持ちはいつしか彼への愛情に変わっていました。しかし、それを先生の生徒への愛だといつも自分に言い聞かせてきました。でも、俊君の声を聞いて、これまで心に貯めていた感情が堰を切って漏れ出してきました。

黙って俊君の手を握り、寄り添って社殿の横の神楽殿の脇に入りました。あたりは雪で真っ白になっていました。
俊君の頬を両手で包み、そっと唇を重ねました。俊君の思いも同じだったと思います。
私たちはそこで抱き合い、互いの唇を重ね合いました。

何分経ったのでしょうか。
ガサ、ガサ、境内の木から雪の落ちる音がしました。

私は唇を離し、彼に声で掛けました。

「俊君・・・ごめん・・・」
「・・・」

俊君はもう一度私に唇を重ねてきました。

「先生、好きです。」
「・・・ありがとう・・・」

18歳の私にはこの言葉を言うのが精一杯でした。でも、いけないことをしてしまったと思いました。

先生は「体が冷えちゃったね。帰ろう。」とだけ言って、雪が深々と降り続く中を私の手を握って歩いてくれました。

 

-ラブストーリー


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