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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

アゲハ蝶 episode2

   

 気まぐれに、月に似た彼について行く。
 久々のベッドのせいで、悪夢にたたき起こされた彼女は、現実に少し安堵し、自分の過去を思い出す。

 アウトローハードボイルドサスペンス!!

 

 酒場へ入った。美味い酒をたっぷり満足いくまで飲んで、ついでにタバコも購入した。
 久々の、忘れかけていた幸せだ。
 けれども、すぐさま覆い被さるようにして恐怖と寂しさが込み上げてきた。またそれを消すように、アルコールを体に流し込んだ。

 逃げろ!
 逃げろ!
 逃げろ!
 死ぬまで逃げろ!!

 冷たい銃口が私を捕まえる。
 アゲハの刺青が暗闇に浮かぶ。

 ぽっかりと。それは、ぽっかりと。

 私には『死』しか見えない。血に塗られた過去と生きる私。もはや死んでいると言っても否定はしない。
 私は死刑。なんで? か? 何人殺したかな……?

 ふふっ、わかんない。

 気付いたとき、私の拳にはどす黒い血がべっとり付いていた。今更動揺なんてするまいて。もっと気色の悪い血を、私は何度も見てきた。血まみれで寝転がるいかつい男。冷たい視線で見下しながら踵を返した。
 裏通りへの細道は、私がよく塒に選ぶ場所。だが危ない奴らが一杯だ。
 野郎は、私をレイプしようとしやがった。股座へ一発、腹への左ジャブ三発、続いて右ストレート一発と留めのアッパー。それで野郎は寝んねした。骨のある奴じゃなかった。
 また別の裏通りへの細道で腰を下ろした。膝を抱え込んで少し眠ろうと顔を伏せたとき、また誰かが私の前に立ちはだかった。顔を上げると、数時間前に見たような白い男だった。
「しばらくぶり」
 白い彼はそう言うと、座り込んでいる私の前に、腰を落とした。
「家に帰ったんじゃなかったの?」
「あんたこそ」
 私がそう言うと、彼は笑いながら「そうだね」と言った。
「帰るところがないなら、俺の家に来ない?」
 ナンパされた。
「何それ?」
 彼は言う。
「今夜は少し冷えるから、話相手が欲しいんだ」
 彼の返答はよく解らないものだけれど、私が気紛れを起こすには充分な理由だった。

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-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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