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スペシャル・フレグランス

   

山田が社長を務める化粧品会社では「スペシャル・フレグランス」と名付けた加齢臭の香水を開発した。

世の中の男性が苦労する女の香水隠し、浮気の必需品だ。

山田は業界のリーダー川本に試してもらおうとプレゼントしたが、意外な展開に・・・

 

第一章 試作品

「社長、これ嗅いで下さいよ。」
「厳さん、何ですか・・うわっ・・」

古くなった整髪料が染み込んだような変な臭いで、社長の山田の顔が歪んだ。

「臭いですよね。へへへ。」
「悪戯は止めて下さいよ。」

小島厳一、通称“厳さん”。父親の代から調香師として会社を支えてくれている。
山田は小さい頃から勉強を教わったり、遊んでもらったりしていたので、厳さんには頭が上がらない。

「加齢臭ってよく聞きますよね?」
「あの“おやじ臭”ってやつでしょう?」

厳さんは何故か楽しそうな笑いを浮かべている。

「社長、今日はマンションに行くんでしょう?」
「な、何を言っているんですか、困りますよ・・」
「ははは、黙っているから大丈夫ですよ。」

マンションに女を囲っているのは、運転手の伊藤しか知らない筈なのに、厳さんが知っている・・
さては、伊藤が喋ってしまったのか?

「伊藤ちゃんを怒っちゃダメだよ。
 ただ、「社長が香水の匂いを気にしている」と言ってただけだから。」
「いや、あれは・・」
「いいの、いいの、何も聞かないから。そんなことより、マンションの帰りに、この“スペシャル・フレグランス”をシュッと一吹きしてみたら?」
「あっ、そうか、その手があるか・・厳さん、ありがとう。」

山田も厳さんと同じような顔付きに変わった。

「先代も香水対策に頭を悩ましていましたよ。
 化粧品会社が臭いものを作るなんて、普通は考えませんから、誰も気が付きません。」

厳さんは小瓶を手渡すと、「じゃ、私はこれで。」と言って、指でVサインを示しながら社長室を出て行った。

“スペシャル・フレグランス”か・・
みんな欲しがるだろうな・・

山田は先月の定例会のことを思い出し、笑い出してしまった。

「以上です。本日はご多用中のとこら、定例会にご出席賜りどうもありがとうございました。」

業界団体の月例会は特に面白い話題がある訳ではない。難しい事は部長レベルで議論され、社長会はそれを承認するだけで、後は懇親会。

「先週、タイ、ベトナムと工場視察に行ってきました。」
「ほう、〝工場視察〟ね・・で、成果は?」
「まあ、いつもながら手厳しいですな。ははは。
 いやいや、勿論、成果はありましたよ。連日、終夜で面談してきましたからね。」
「えっ、連夜ですか。お元気ですな」

こんな具合に、話題は女のことばかり。社長会の品位が疑われるが、これが実態である。

  よし、会長にプレゼントしてみるか・・・
  そのためにも、どれくらい効果があるか、
  今夜、明美のところに寄るから、試してみよう。

「ああ、伊藤さん?そう、うん、出かけるから、車の用意をして。」

 

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