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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

トリガー 誘発! 3

   

 ついに、誉田は、事件の渦中に引きずり出された。これまで、他人で善人の者の心に巣食う悪意を引きずりだしていた異質なヒーローが、真の悪、意外すぎる相手にその身を引きずり出され窮地に陥る。勝つか負けるか、道はひとつしかない決断に迫られたとき、誉田の新たな試みが作動する。

 事件はトリガーなくしては起こりえない。姑息で臆病なダークヒーローのひとつの幕が降りる。しかし、それはまた新たな試みのはじまりでもある。

 

 誉田に警官が護衛することになった。二十四時間護衛をつけてくれるらしいが、それはそれで気が重くて嫌気がさす。
 仕事に向かうときは、まさかの送り迎えありの好条件ではある。まるで、覆面刑事になったような気分に浸っている。自分の覗き見と盗聴という犯罪スレスレの特質が、思ってもいなかった待遇でいられるのは亡くなったドウジョウ警部とのかかわりがあったからだろう。
 ある意味、誉田とかかわったがために、命を落とした可能性だって否めない。素直に誉田は黙って苦言なく応じた。協力を惜しまないことに同意したのだ。そうしなければ、世話になったドウジョウ警部が浮かばれない。敵討ちというわけではない。誉田単独でなにもできやしない。相手は複数で、組織まがいな危険因子な組織であることはまちがいない。
 その身が危機にあるいじょう誉田は警察の保護下に置かなければならない。

 自宅にいるとき、護衛の刑事たちはマンションの外で張ってくれている。いつも二人だ。ドウジョウ警部の部下でもあり、”Happy laugh”を捜査している刑事たちでもある。
 なぜ、そんな多忙な刑事たちがわざわざ一般人の誉田にこれだけの待遇で護衛しているのかにも理由がある。一度は組織の関係者と接触した証人でもある。要は、囮になっているのを誉田も自覚していた。
 誉田と警察の関係性も天秤で量れば平行ではない。いつまでも偏ってつりあわないのだ。利用し、利用され、便宜を図られてたがいにその価値を見出しているのだろう。
 そして、誉田が自宅にいるとき、そこに隙が生じた。
 宅急便が届いた。誉田は無用心にドアを開けてしまった。ネットで買い物をしていたために、それが仇になった。誉田の個人情報が漏洩していた。どうやら、”Happy laugh”のメンバーに尾行され名前と住所はしられてしまった。
「そこまでやるのね」誉田は玄関口で不用意に開いてしまった扉にむかって後悔していた。
 人物を特定するのに、そのふたつの情報だけでじゅうぶん特定できる。インターネットを使わない人間は誉田の世代はほとんどいないだろう。そういう時代なのだ。普及するものはそれだけ警戒がゆるんでしまう。インターネットのネットショッピングを利用していることまでしられてしまっていた。そこからどこかの会員であることも予測がつくが、そこまで頭がまわるのがすごいやつがいるものだ。
 配送会社に勤めているキネモトがいたが、いまは逮捕されている。メンバーが一人だけではないことが裏づけされる。ほかにもいる。というよりまだまだいる。そう考えるのは自然だろう。かんたんにメンバーになれるから”Happy laugh”の存在は脅威なのだ。

 宅急便の配送業者になりすまして訪問してきたその悪意のある”Happy laugh”のメンバーは、誉田を見るなり、微笑んだ。
 誉田が注文した情報をつかんだ運送会社に勤務しているメンバーがつねに確認していた。誉田は考えもつかなかったがすべての運送会社に”Happy laugh”のメンバーが在籍していた。情報漏洩から免れるすべはない。確実に誉田の情報を得ることを考えていただろう。
 もしくは清掃業者もそうかもしれない。刻んだ個人情報の伝票であろうと復元することは容易なことだ。ごみ袋はゼロ円の価値ではない。とある人物たちには福袋かもしれないのだ。
 そして、まんまと誉田はその罠にはまった。

 ピンポーン…。
 ドアを開けて配送会社の男二人によって誉田は気を失いダンボール箱に入れられそのままどこかへ配送された。というより連れ去られてしまった。
 どのくらいの時間が経ったのか誉田はわからない。まぶたを開けると椅子に座らされ、腕を後ろにまわし体をロープで縛られていた。
 周囲は薄暗くほとんど目測がつかめない。ぼんやりとあたりが揺らめき、光が漂っている。そのせいでそれいじょう目が慣れることはない。むしろ、真っ暗闇の方がじょじょに闇に目が慣れていがいとはっきりとみえてくるものだ。この監禁方法も頭のいいやつが”Happy laugh”にいるのだろう。
 誉田は少なからず恐怖していた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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