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ラブストーリー

ふたりの生活:九話

   

結局、食事もろくに取れず店を出た羽澄。
倉庫で作業を続けていると、千川が姿を現す。
どうやら、羽澄にパンを持ってきたという。
羽澄はパンを美味しそうに頬張っていると、千川からあることを話される。

 

 こんな調子で仕事に打ち込むのってありえない。胸の辺りがモヤモヤするし、あんまりご飯が食べられなかったから力も出ない。
 まるで顔がパンのヒーローが弱体化したときのような心境だよ。
 書類整理をしながらも、購入したペットボトルのお茶を口にし続ける。飴かガムでも噛みたいけど、就業時間が過ぎなければアウト。
 室内と室外との温度差も感じられず、額や背中から汗がふつふつと湧き上がってくる。
 コンクリートの建物って日射熱が残り易いし、通気性も悪い。
 二十度ぐらいまで室温を下げたい。キンキンに冷えた空気を身体全体に浴び続けていたい。デスクに一度戻ってから、倉庫整理しよう。
 エレベーターに乗り込んで、壁に寄りかかった。鉄からじんわりとした冷たさが皮膚へと伝わり、大きく二酸化炭素を含んだ息を吐く。
 空回りしすぎて馬鹿にもほどがある。なんでこう、うまくいかないのかな。
 地下一階に降り、やけに寒々しい部屋へ踏み入れた。照明をオンにし、ついでに冷房を入れた。
 わたしが作業を行う倉庫は、店舗間の商品移動の際に発生した伝票をまとめるだけ。ついでに半年前の伝票は必要ないので破く。
 ここでなら時間は潰せるし、ふて寝をしても叱られることはない。気持ちを切り替えるためにも、ここで過ごすこともある。
「さてさて、まずは過去の伝票を破こうかな」
 ゴミ袋を広げ、段ボールの中にある伝票を確認しながら破く。ただ破くだけなのに、何十枚も重なった紙を破くためには力が入る。コツとすれば、縦から破くのが楽。
 パイプ椅子に座って、紙をビリビリと裂く。その単調作業を何度も続けていると、背後から襲いかかるのは眠気。
 今後、就業時間までここで暇を潰すのもアリだね。うたた寝をしていても説教はされることはなかろう。
「ふあぁ、なんだかなぁ」
 うーん。それにしても、お腹がペコペコで視界がクラクラ。日替わり丼を三口分しか食べられていないので、空腹過ぎて作業効率が落ちる。
 なにか口にしたいけど、自動販売機のジュースしかない。もっと、糖分と塩分を含んだ固形物を口にしたいな。

 

-ラブストーリー


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