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小話 レンタイ責任

   

世の中にいくつも存在する「連帯責任」をテーマにした小話です。

俺は、部活の仲間がエッチな本を学校に持ち込んだということで、連帯責任で叱られていた。やや理不尽な処遇に俺は毒づく。

一方の教師にも、実は「連帯」的な責任に悩まされている現実があって……

 

「ほらっ、お前もちゃんと話を聞け! 責任ってもんがあるだろうが」

 担任のケンジが声を荒げるのを、俺は心底うんざりしながら聞いていた。
 薄汚い教室の床の上で正座を強いられた膝が軋んでいる。
 だが、表情に出してはいけない。
 そんなことをしたら、ケンジの機嫌がさらに悪くなるのを俺は知っている。
「まったく学校に余計なものを持ち込みやがって。校則にも書いてあるだろ。関係ないものを持ち込むなと。ましてやこんなもんなんかもっての他だぞ」
 ケンジは少し声を上ずらせながら、教壇をばしんと叩いた。
 アキラとヒロシが苦労して持ってきた雑誌がぎゅうっと押さえ込まれる。
 表紙には俺たちよりもいくつか年上の女の子たちの裸と、いわゆる未成年者お断りのマークが記されている。いわゆる「エロ本」というやつだ。
「まあ俺にも経験がないこともないが、大人としては見過ごしてやることもできん。校則も社会のルールもまずは絶対に守らなくてはならん。いくら成績が良くても、部活でいい結果を出しても、根本のルールを守らないようでは意味がない」
 ケンジの顔色がみるみるうちに良くなり、声も良く通っていくのを聞きながら、俺たちは心底ゲンナリしていた。
 こうなると、まず一時間は説教される形になるだろう。
 学校では明らかにしていないが、俺とケンジは従兄弟同士の関係で、だからこそ、ケンジの粘っこい性格も理解している。
 自分の弱みを突かれるのは嫌なくせに、相手を責めることには一切ためらいがないというのが、ケンジという男なのだ。
(ったく、余計な色気出しやがってよ)
 延々と響く説教を聞きながら、俺は心の中で舌打ちをした。
 そもそも俺は、エロ系のネタはスマホで拾うことにしているし、クラスの男連中も大体はそうだ。
 それなのにアキラの奴が、「紙のエロ本の方が修正が薄い」だなんて言い出して、エロ本を買ってきたりするからこういうことになるのだ。
 わざわざ書店にまで足を伸ばして買っても、人目につく部室で読書をしてしまっては、秘密は守れない。
 事実、通りがかったケンジに見咎められて今に至るというわけだ。
 俺は、中身も見ていないのに、トイレから戻ってきたところで鉢合わせになり、こんな目に遭っている。まったく理不尽である。
「俺、帰ってもいいですかね。本の中身、読んだわけじゃねえし」
「いや、ダメだ。連帯責任ってものを味わってもらう」
 やや悪態を突きつつの俺の提案は、ケンジによってばっさりと退けられた。
 これはいよいよ長説教を覚悟しなければならないらしい。
「校則には、『校則違反者ではない人間も連帯責任を取らせる』とは書いていなかったはずですがね。条例にでも書いてあるんですか?」
「停学にされたくなければ、私がいいと言うまで教室を出るべきではないと思うがな。さて、この本はどこで買ったんだ? コンビニじゃあ見慣れない本だが」
 予想をまったく外さない答えが返ってきた。俺は心の中で舌を出しつつ、この退屈な時間を何とかやり過ごそうと決めた。

 

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