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SF・ファンタジー・ホラー

サクリファイス クロニクル編11

   

 アーロンとエイハブの計画により、カサンドラを魔女裁判に架けることに成功したものの、予定外の事態がシャルルの前に立ちはだかる。

 15世紀を舞台に、サクリファイスと呼ばれる怪物を描いた、ゴシックダークファンタジー!

 

 この頃、僕とアーロンは手紙のみのやり取りをしていた。そして、読んだ手紙は全て燃やすよう指示されていた。
 シンディは、毎晩の様に僕の元を訪れた。毎晩他愛のない話に花を咲かせ、それだけで楽しかった。
 そして、相変わらずカサンドラは僕を認めず、冷たい視線だけを投げ続けた。
 ある晩、エイハブが僕の宿を訪れた。とうとう、計画が実行される時が近付いて来たのだという。
「カサンドラ隊の男共を、全員反逆軍としてまとめ上げたんだ。そろそろ、計画を実行する時が来た。だからよぉ、その前にアーロンに会わせてくれ」
 僕は、アーロンの指示に従うだけだった。
「エイハブ。君には悪いけど、それは出来ない。でも、アーロン様から君へのエリクシールを預かっている。アーロン様は、カサンドラが消えない限り、安心して会えないって」
 僕は、クレメンティーナがとっていてくれた、ダミアンの聖杯に赤ワインを注いだものを、エイハブにエリクシールと称して渡した。
 エイハブはそれを奪うようにして受け取ると、こぼれ落ちるのも気にせずに、一気に飲み干した。
「こりゃ、ただのワインじゃないのか?」
 エイハブの質問に、僕は答えた。
「キリストの血も、ワインだと聞いている。それを託したのはアーロン様だから、疑うという事は、アーロン様を疑う事になる」
「シャルルも、口にした時はワインだったか?」
 僕は、頷いた。
 エイハブは、狂った様に笑った。そして、踊る様に飛び跳ねた。
「やったー! これで、俺は不死身だ!! 最強だ!!」
 悪いタイミングで、僕の部屋の扉が開いた。
「女?」
 シンディだった。幸い女の姿をし、ストールで顔を覆っていたお陰で、エイハブに彼女だとバレなかったのだが、危ないところであった。
 エイハブは笑いながら僕を小突き、上機嫌に部屋を後にした。
 エイハブが完全にいなくなったのを確認して、シンディが口を開いた。
「心臓が、止まるかと思ったわ」
「ごめん」
 僕の謝罪に、彼女が不思議そうな顔をした。
「何故、貴方が謝るの?」
 僕は、顔を背けた。
「ワインでも、飲むかい?」
 シンディに、ワインを注いだカップを渡した。
「なんだか、隊の中がおかしいの」
 シンディは、ワインを呑みながら怪訝そうな顔を僕に向けた。
「どうゆうこと?」
「男達が、何か企んでるみたい。そのせいでカサンドラ様も、少しピリピリしてる。エイハブ、何しに来てたの? シャルル、何か知ってたりする?」
 僕は咄嗟に、言い訳を考えた。
「僕の顔色が悪いから、戯曲を休む日を作ってもいいんじゃないかって、彼が気を遣ってくれたんだ」
「そうかしら」
 シンディは、少し心配そうな顔を僕に向けた。
「カサンドラは、僕が嫌いみたいだから、毎日出入りしてる事が、本当は嫌なのかも知れない。たまには、休んだ方が良いかも知れないね。シンディ、明日は休むから、そう伝えて欲しい。でも、会っていたと知られるといけないから、僕が今から手紙を書くよ。それを、渡してくれないか?」
「わかったわ」
 僕はシンディに、明日の晩は戯曲を休む旨を記した手紙を渡した。彼女は、その手紙を握り締め、この晩は帰って行った。
 翌晩、彼女は僕の部屋に来なかった。嫌な予感がした。
 その翌晩だった。いつもの様に戯曲を披露する為、僕はカサンドラ隊の借りる宿を訪れた時だった。僕の前に、エイハブが立ちはだかり、その部下達が一斉に僕に剣を向けながら取り囲んだ。
「シャルル、あんたに魔女裁判のお触れだよ」
 僕が縛り上げられた時、その背後からカサンドラが数人の部下を連れて歩いてきた。
「何を勝手な事をやってんだ! エイハブ、誰の許可だい?」
 すると、エイハブの部下が、今度はカサンドラに剣を向けた。
「貴様ら、何のつもりだ? 隊長に、逆らうのか?」
「カサンドラ、あんたの時代は終わりだよ。カサンドラ並びに女共は、全員魔女裁判だ! 縛り上げろ!!」
 カサンドラの言葉を無視し、エイハブが叫ぶ。男達はエイハブの指示に従い、女達を全員縛り上げてしまった。
「エイハブ、貴様!! 反逆行為か!?」
「勇ましい女隊長さんよ。所詮女は女だ、男に力で敵う筈が無いんだよ。この魔女シャルル・アンリを魔女と見破れずにカサンドラ隊に出入りさせた、その罪は魔女と呼ぶに等しいだろう」
 なんでもいいのだ、カサンドラを火刑にさえ架せれれば。だが、そこには悪い事にシンディまでもが捕らえられていた。話が違う、捕らえるのは僕とカサンドラだけでは無かったか。
 だが、その疑問を投げる暇もなく、僕達は別々に牢獄に投げ込まれた。

*****

 

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