幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ノンジャンル

ポータブル予想機

   

高校生の桑原 秀行は、ふらりと訪れた店内で、唐突に店員から祝福される。開店以来一万人目の客ということで、記念品が贈られることになったのだ。

店員から手渡されたのは、桑原が使っているスマホとまったく同じ形をした「ポータブル予想機」だった。何でも、スポーツや抽選など結果の見えないものの内容を予想し、結果を教えてくれるというらしい。

半信半疑で桑原はいくつかの質問をしてみたが、その全てがぴったりと的中した。ミステリーやオカルトが好きな桑原は、完全に機械を信用した。

そして桑原は、予想機の力を使って、クラス内で予言者としての地位を確固たるものにしていくのだったが……

 

「おめでとうございますっ!」
 ふらっと入った見慣れない商店の入り口で、僕は唐突に祝福された。
 頭上でくす玉が割れ、中身が僕の方にふりかかってくる。
「な、なんですか……」
 僕は反射的に身構える。
 すると、目の前の若い女性の店員さんは、計算を感じさせない満面の笑みを見せながら口を開く。
「おめでとうございます。あなたは、当店開店以来一万人目のお客様です」
 柔らかな言葉に促されるように、僕は視線を上げた。
 確かに、くす玉から垂れ下がった紙には「来店一万人目!」と、勢いのある文字で書かれている。
 なるほど、キリのいいところで来園者や来訪者を祝うというのはごくありふれた話だ。
 しかし、商店でそんなことをするのは果たして普通なのだろうか。
「つきましては、お祝いとして粗品を贈呈したいのですが、いかがでしょうか?」
「え、ええ……」
 いきなりの提案に曖昧な返事をすると、若い女性の笑顔が一段と輝きを増した。
 まるで、心底好きなものを目にした子供のように邪気がない表情である。
「ありがとうございますっ! それでは、奥へどうぞ!」
 女性はにこにこと笑いながら僕の手を掴んできた。
 女の子と手をつないだことなんてない僕は、かなり強くドキッとしてしまい、体を硬直させてしまったために、手をほどくタイミングを逸してしまった。
(大丈夫かな。何か悪い人たちじゃなければいいけど……)
 僕は、女性のにこやかな雰囲気とは裏腹に、ガチガチに緊張しながら店の奥に向かうことになった。

 

-ノンジャンル