幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

自称天才数学者の推理記録 記録5 第2話

   

記録5《赤と黄色》

今回は、中編です。
その2。
タイトルの「赤」は、信号では止まれの色。
つまり、止まれと警告を出すほどの、情熱の色なのです。

 

 
 長命寺は、石川県にある。
 同じ名前の寺は、全国にいくつかある。
 だが、この長命寺は、それらとは関係はない。
 歴史は古い。
 平安中期、藤原利仁が建立した、とされている。
 かぐや姫伝説発祥の地ともいわれているが、定かではない。
 寺に貫禄を持たせようとして逸話をデッチ上げるのは、よくあることなのだ。
 富樫が弁慶から貰った勧進帳が寺に残されている、というものすごい話まで、作られている。
 しかし、話をデッチ上げる元気があったのは、江戸時代くらいまでのことであった。
 現在では忘れられた山寺、というようなものである。
 確かに、金沢市から、車で1時間も奥へ入った所にある山寺なのだ。

 桜小路悟一は、研究道具と寝袋などを車に入れ、長命寺へ行った。
 もちろん、長坂博司は、いい顔をしなかった。
 だが、桜小路悟一は、先ず、研究に対する礼金を、差し出したのである。
「平成錦秋大学宛で、領収書をお願いします」
 これで、長坂博司の顔が、ほころんだ。
「お寺にご迷惑は、おかけいたしません」
「そういうことなら、何とか協力いたしましょう」
「じゃぁ、奥の部屋でも、ひとつ貸していただいて……」
「奥の部屋?」
「亡くなったご住職の話では、奥の部屋なら静かでいい、ということでしたが」
「分かりました。和算関係の古文書を、全部、奥の座敷に出しましょう」
「すみません。あ、これは、宿泊費ということで……」
 桜小路悟一は、礼金とは別に、分厚い札束を渡したのであった。
「これは、東洋テレビ宛で、領収書をお願いします」
「東洋テレビ?」
「深く考えないで下さい」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

自称天才数学者の推理記録 記録5《赤と黄色》<全5話> 第1話第2話第3話第4話第5話

コメントを残す

おすすめ作品