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SF・ファンタジー・ホラー

サクリファイス クロニクル編13

   

新章突入!

三百年の眠りから覚めたシャルル。
嵐の翌朝、海で少年を助けるのだが――……。

サクリファイスと呼ばれる怪物を描いたゴシックダークファンタジー!

 

 僕は眠っている間、長い夢を見ていた。それも、おかしな話かも知れないけれど、女になっている夢だった。女の身体で、今までの人生をやり直していた。ソバッカスとは親友だったし、母とは仲の良い親子だった。裕福ではなかったが、幸せだった。
 やがて僕にも婚期が訪れ、村の男と結婚を考えた時、ふと違和感に気が付いた。夢ではなく、もう一度男として生きてみたいと思ったのだ。男に任せて生きていく人生の方が、引っ込み思案な僕には合っているのかも知れない。けれど、自分の足で歩んで行く人生も手にしてみたいと思ったのだ。今思えば、それは当時の女であれば望んでも不思議では無い事柄だった。
 長い眠りから、プネウマの姿で目を覚ました僕は、マテリアに戻った。身体に違和感は無く、起き上がる時はいつもの朝と同じだった。
 身に纏った衣服は古びていて、酷く弱っていた。それは、僕の眠りが長かったことを、物語っていた。胸元に、古くなった封筒が乗っていた。手に取ると、それはクレメンティーナからの手紙であった。
『シャルル。目覚めたら、ジェルマンと言う名の伯爵に宛てて手紙を書きなさい。そして、私達からの手紙を待つように。永遠の母、クレメンティーナ』
 僕は机に向かって手紙を書こうとしたのだが、置いてあった紙は酷く焼けてボロと化しており、インクは固まっていて、とてもじゃないが使える代物では無かった。僕は諦め、アーロンの残しておいてくれた金の一部を手に、屋敷の外に出た。
 久々の太陽は眩しく、暖かかった。気持ちの良い風が吹いていた。僕は少し寄り道がてら屋敷の横の森を抜けてみると、そこは見晴らしの良い崖となっており、大きな海が見えた。金がきらきらと反射していて、綺麗だった。一隻の木造の大きな船が停まっていて、見慣れない姿の人間が数人忙しそうに働いていた。暫くすると、船は海の彼方へと向かって動き出してしまった。
 僕は、どのくらい眠っていたんだろう?
 不安を抱えながら、僕は村のあった方へ足を進めた。
 屋敷から離れ、森を抜けると高い建物が見えた。人々が僕を指差しながら、笑っていた。僕の姿が、酷く滑稽だと見える。村には見たこともないくらい高い建物が密集しており、人々が煌びやかな衣装を身に纏っているように思えた。まるで、舞台衣装で過ごしているようだった。
 僕は馬鹿にされながらも、適当な人間になんとか金(きん)を金(かね)に変えてくれる店を紹介して貰い、そのあと服を調達した。まともに換金して貰えなかったように思うが、致し方なかった。そして、ペンとインクと紙を購入し、しばらく分の食料を調達した。何かよくわからない食べ物も多かったように思うが、どこかの店で食事する余裕はなく、少しでも早くこの場から立ち去りたかった。この時、僕は自分が三百年眠っていた事を知った。時代の流れが大きすぎ、動揺し、暫く屋敷で落ち着いてから出直すことにした。この先の事は、アーロンとクレメンティーナからの手紙を待ってから考えようと思った。
 屋敷に帰ってから、本でも買ってこれば良かったと後悔した。先に食事をしようと肉とパンを口にして驚いた。僕の生まれた時代の村で買う安価なパンといえば、レストランで皿代わりに使われていた物であったが、この時代のパンは使い回しではなく、それに味があった。ハムが美味しく感じられた。三百年振りのワインを口にして、安堵した。
 僕はクレメンティーナへの手紙を書くと、翌日村に郵送する為に出掛け、帰りに本を数冊購入した。歴史の本や小説等を主に選んだ。そして、三百年の時を埋める為、屋敷に篭って勉強を始めた。

 

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