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SF・ファンタジー・ホラー

月うさぎ/第2夜

   

第2夜

“月うさぎ、ぬいぐるみを作る”

 クロワッサンのような黄色い三日月の夜、月うさぎはつぶれかけたおもちゃ工場を訪れます。社長さんに頼まれた月うさぎは、一匹のぬいぐるみを作るのでした。

 大人のための絵のない絵本、少し不思議な癒し系ファンタジー。

 

第2夜

“月うさぎ、ぬいぐるみを作る”

 明るく輝く黄色い三日月が、真っ暗な夜空に浮かんでいました。焼きたてのクロワッサンのように、強く暖かい光を放つお月様です。

 その暖かい月明かりに照らされながら、一匹の白いうさぎが、ふよふよと夜の街を漂っていました。

 白くやわらかい毛並みと赤いビー玉のような瞳は、うっかりすると子供の好むぬいぐるみのようにも見えますが、彼はれっきとした「月うさぎ」です。

 片手には身体の半分ほどもある銀の懐中時計。首からは、きらきらと光る小さな指輪をぶらさげています。

 実は、月うさぎは今、少しだけ道に迷っていました。

 懐中時計のコンパスと、自慢の長い耳によれば、今夜のお仕事の相手は、この辺りに居るはずなのです。でも、辺りに広がっているのは、人気のない町工場ばかり。誰かが住んでいそうな建物はありません。

 大きな機械や見慣れない材料の積み上がった古い建物たち。ここは、お日様の出ている時間に、人間たちがお仕事をする場所なのです。

 お日様が西の空に沈んで、お月様が空高くに昇る頃には、多くの人間は、ふかふかのお布団の待つ家に引き返してしまうはずでした。

 場所を間違ってしまったのでしょうか?

 月うさぎが不安になっていると、ふと小さな明かりが目に飛び込んできました。

 その明かりは、倉庫と思しき建物の片隅から漏れてきます。見つけました。そうです。今夜の相手はきっとあの場所に居るに違いありません。

 時刻は深夜。もう街中が夢を見ている時間です。こんなに遅くまで倉庫に居るなんて、なんて働き者の人間なのでしょう。

 月うさぎは、その明かりを目指して、一直線に飛んで行きました。

 

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