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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

自称天才数学者の推理記録 記録5 第5話

   2014年12月26日  

記録5《赤と黄色》

今回は、中編です。
その5。
タイトルは、『赤と黄色』。
『赤と黒』のパクリではありません。
念のため。

 

 
 金沢市の中心部は、渋滞することが多い。
 うっかりそれに巻き込まれると、時間を浪費してしまう。
 だが、長坂博司は、地理に詳しい。
 先に金沢市を出て、迂回して目的地へと向かうのであった。

 長坂博司の車は、左に日本海を見て、走った。
 助手席にダニエル・マッケンジーが座り、スーザン・ターナーは後部座席である。
 ダニエル・マッケンジーが、言った。
「ミスター陳が来られなくなったこと、お詫びします」
「せっかくコネクションが取れたのに、急に、あなたに変更。驚きました」
「すみません」
「ミスター陳は、どうしたのです?」
「フェルメールに、買い手が現れたのです。ほんとに、突然でした。どうしても手が離せなくなって」
「それで、あなたに変更?」
「はい。これから、極東は、私とミズ・ターナーが担当します」
「今後ともよろしく」
「こちらこそ。たくさんあるのでしょう?」
「ええ、長命寺だけでも、2トントラック2台分。今後は、他の寺のを盗みますわ」
「日本は、いい市場になるなぁ」

 それは、金沢市から、30分ほど走った場所であった。
 県道へと曲がる。
 畑の先に、古い倉庫が見えた。
 長坂博司は、その倉庫の前に、車を止めた。
「ここです。どうぞ、中へ」
 広い倉庫であった。
 長坂博司が、電灯のスイッチを入れた。
 倉庫の中央部だけが、明るく照らされた。
 そこには、段ボールが山積みになっていた。
 長坂博司は、段ボールの1つを開け、中から掛け軸の箱を取り出した。
「どうぞ」
 ダニエル・マッケンジーは、慣れた手つきで箱を開けて、掛け軸を取り出した。
 段ボールの上に広げ、子細に見る。
「これは……、室町後期、と見ましたが……」
「さすがですな」
「この裏稼業は、目利きでなければ勤まりませんよ」
「室町なんて、新しい方です。平安、鎌倉のが、ごっそりあります。長命寺は、古い寺なのでね」
「全部調べるとなると、かなり時間がかかりますな」
「どうぞ、ごゆっくり」
「調べるのに、3日。きちんと梱包するのに4日。出荷に、合計で1週間……」
「金沢にホテルを取りますよ。それとも、日本旅館がいいですか? 高級な旅館を知っています」
 その時、段ボールの陰から、声がした。
「僕も、金沢の高級旅館に泊まりたかったなぁ」
 倉庫の隅の陰から出てきたのは、桜小路悟一であった。
 彼は、長坂博司の方へ、進んだ。
 長坂博司は、驚いた。
 あんぐりと口を開けたままである。

 

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