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ラブストーリー

BAD=CHILD 6

   

 小田は独断で超枝本部長の意思を無視してホシを逮捕しようと神奈川県警の警官隊に指示を出す。そのために、相棒となっている県警の暮蛇刑事の協力のもと、実行を明朝にむかえていた。
 しかし、そこに大桐と松仲が現れる。様子を伺いにきただけだが、松仲の刑事の勘がなにやら隠蔽めいた空気を感じ取る。それは、犯人を目前にしているのにも関わらず、待機。という本部長の命令に、小田は抗おうとしているのではないか。暮蛇という相棒も胡散臭いと睨んでいた。
 確証がないいじょう、大桐と松仲は神奈川県警へ訪れる。野々原と少年の逃亡ルートに助言をしてもらうため。
 厄介払いに成功した小田は安堵した。小田の作戦に揺るぎはない。と、思ったとき、小屋にいるはずのホシと少年の姿がないと報告を受けた。

 監視されている小屋から逃げだしたのだ。しかし、明朝浜辺に人影を捕らえた小田は、なにを見ることになるのか。

 

 警察は野々原を確保するタイミングと同時に少年を保護するということだった。本部長はそれまで少年を保護せず泳がして裏の策略が急加速しながら動いていた。
 家出なのか、誘拐なのか、偶然に野々原と遭遇しての行動を共にしているだけなのか、その事実を確認してからと、本部長は命令をだした。
 本部長は神城に息子が家にいるか、どうしているのか、という問い合わせのようなことはすぐにはしない。タイミングを探っていた。そして、神城に直接、取引を持ちかける。霧樹を救出する代わりに見返りを求めると。
 後継者を血族以外にすることに抵抗がある神城社長は、霧樹の成長を信じていた。いつまでも幼稚な神経で自立心のない軟弱な子どもが大貿易会社を背負っていけるはずもない。どんな苦境に立たされても折れない強固な精神力がなければならない。
 神城は、どうしても後継者である霧樹を失うわけ、傷を負わせることはできない。家出なら、冒険心から自立心というものにつなげるひとつのきっかけになると、その羽ばたきを自由にさせる。それが親というものだからだ。
 これを逆手にとったのが、超枝の見解だった。

 大桐は小田からきいた話を、通話を切電したあとに松仲にきかせた。
「まさか、そんな命令がくだるとは…」
「まったくだ、やってられん…、いくら警察のためで、それが国民の安全へつなげるとはいえ、ひとりの少年の身を投げている」
「私たちが野々原が犯人ではない、と推察した結論にいたったとはいえ、確保するときに少年にまでなにかが起きる安全は保障できない」
「けっきょくなにをしたいのか本部長は…」大桐は頭を掻いた。
「結末が悲劇にならなきゃいいけど」松仲は奥歯をかみしめるようにしていった。
「だが」大桐は、小田の話のつづきを話した。
 それは、霧樹のことだった。
「その少年のことだが」
「なにか新しい情報が?」松仲は冷静に取り合った。
「あぁ、どうやら家出と決まった。学校にもうひと月も来ていない。しかも、父親はなんとも思っていないようだ。母親は苦言していたというが」
「だれが尋ねたんですか?」
「学校の担任が神城家に電話して、家出していると…、捜索を両親はださず、あの父親だからな、しかたなく担任が捜索願を警察にしたらしい。そして事情をきいてわかったようだ」
「両親はそのことを?」
「さぁな。心配していないわけではないだろう。親だし、でも霧樹少年もいったいどう考えているのか? いくら反抗期でも指名手配犯と行動をともにして」
「本人はしらないんじゃないですか? 家出をリードしてくれる大人の女性として助けてくれているいいひとだと思っているかもしれませんよ」松仲は霧樹少年の心情をイメージする。
「だとしても、他人なんだから、なにかしろ恐怖心が抱くものだろ普通さ」
「そうかもしれない。でも少年はそれいじょうに抱えた、いや、逃げたい現実の渦中にいる。だとしたら他人に左右させられる人生を踏み出そうとしているのはわからなくもない」
 大桐は首をかしげる。「そんなにも置かれた幸福な環境から逃げたいものか。ちょっとは親の気持ちもわかってもらいたいな。どれだけの期待と関心が親から子あるか、わからないや拒否されては嘆くのは親ばかりだろ」
「わかってますよ。それがうまく通じ合わないのが”反抗期”でしょう。大桐さんだってそうだったんじゃないですか?」松仲は笑いながらいった。
「なにがおかしいんだ。それはそうだが、だがいまは良好だ。警察学校はいるまえに良好になったよ」大桐は胸をはった。相変わらず声のボリュームは最大音量。
「もう、わかりました」耳をふさぎたい衝動が、運転のせいで両手がふさがっていることに嫌気がさした松仲だった。「そういえば、いまって夏休みですね、義務教育は…」
 そうだな、と大桐はこたえた。
「もう夏休みなら、好き勝手させているのでしょう。いくら担任が心配しようと、けっきょく夏休みがあけないと、もう事情はわからないままですからね」
 大桐も深く同意するようにうなずく。
「とにかくだ。われわれも小田のところへいきましょう、このまま」松仲は現状把握を認識したところで、自身の頭脳をフル稼動させ、シナリオを創作する。
「おまえの頭脳と勘は刑事にとってもかなりのものだ。てか、そろそろ出世街道歩くころだぞ。いつまでも現場の刑事をやっていてもしかたあるまい」
「もちろんです。チャンスはいくらでもあります。でも、ひとつひとつの事件を手掛けることは、現場でしか味わえない。経験値こそが人生の糧になる。そのためにはまだまだ多岐に渡って事件を捜査したい。それが私の刑事としてのセンスに化けますからね」
「やれやれ、おまえはすごいな。ある意味、本部長よりも野心家だ」
「やめてください。これは私の人生ですよ」
 はいはい、と聞き流す大桐だった。「世襲はふがいないというのがオチだが、霧樹少年が救われても、そういう惰弱な子どもなんじゃないか?」
「そうだとしても、われわれは職務をまっとうするのみ。どんな結果になろうとも」
「刑事の鑑だよ。おまえは」

 

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