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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

蝶を運ぶ風 前編

   

 アゲハ蝶~紫煙~の裏話。
 キティと龍(ロン)の物語。
 人生を奪われた悲劇の暗殺者達。

 アウトローハードボイルドサスペンス!

 

「私、蝶になれるかな?」
 それは、親友の一言から始まった。
 親友、ファジー・ロップ。彼女に親友だなんて言ったら笑われるかもしれないけれど、五つ程年下のファジーは、少なくとも私にとっては親友であり妹のような存在だ。
 ただ無機質で冷たいだけの息詰まるコンクリートの壁に囲まれ、血の臭いと酒臭い空気にうんざりしたのかもしれない。時折、死ねれば楽なのに……なんて言葉が、私達の間で合言葉の様に流行った。
 ファジーは蝶になりたかったそう。私は、彼女を運ぶ風になりたいと思った。
 お節介かも知れないけれど、まだ人の温もりを充分に知らない彼女を、ここに閉じ込めておくのが勿体無いと思った。
「ファジー、今夜蝶になりなよね」
「え?」
 きょとんとして、彼女はまだ穢れ切れないその目を向けた。
 丁度、仲間が二人組みで、今夜脱走計画をしている話を耳にしたのだ。奴らが逃げたとき、大袈裟に騒ぎ立てれば良い。どさくさに紛れて、逃げてしまえば。
 思い立ったら吉日だと、ごひいきさんに偽装パスポートと航空チケットの手配をさせた。
 向かうは米國、自由の国!!
 それでも、組織を裏切る以上、命を失う覚悟は必要だ。私は、もう充分生きたと思うし、ファジーが逃げ伸びる為なら、まぁいいかな。なんて思った。
 そんな話をしたら、ファジーは私の気持ちを汲み取ってくれたようで、うんと返事をしてくれた。

***

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

アゲハ蝶 〜硝煙〜<全2話> 第1話第2話

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