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SF・ファンタジー・ホラー

サクリファイス クロニクル編15

   

ロザリーナとの生活を幸せに過ごすシャルルに、再び波乱の予感が舞い降りる。
シャルルの前に三百年振りに現れたのは、かつてアーロン達を追い詰めた薔薇十字団だった。

サクリファイスと呼ばれる怪物を描いた、ゴシックダークファンタジー!

 

 僕は、意を決して自分の舌を力一杯噛んだ。痛みで涙が溢れると同時に、口の中で血液が溢れ出た。僕は、ロザリーナへの口付けを通して、彼女へ僕の血液を与えた。
 いつか、アーロンが教えてくれたサクリファイスの造り方。自らの血液を第二の心臓が現れるまで与え続けること。
 第二の心臓。それが何かわからないまま、僕はロザリーナを死なせたくない一心で、自らの血液を与え続けた。傷が塞がれば、再び舌を噛んだ。
 突然、ロザリーナの弱々しくなった心臓の音と別に、心臓の鼓動が聞こえ、これが第二の心臓なんだと感じた。
 心臓の音は規則正しく、徐々に力強さを増し、元の弱々しかった鼓動を打ち消した。
 僕は彼女の唇から離れ、ロザリーナの頬を撫でながら様子を伺った。彼女の細かった呼吸も次第に元の穏やかさを取り戻し、ロザリーナは静かに眠る、眠り姫へと変貌した。
 僕の舌の傷は塞がっていたが、再び傷付けることはせず、ロザリーナへありったけの愛情を込めた口付けを贈った。そして、彼女をそっとベッドへ寝かせたのだった。
 その日を境に、僕とロザリーナの生活は始まった。
「ロザリーナ、こっちのドレスはどうだい?」
「私は、黒いレースの方がいいわ」
 僕は、ロザリーナを人形のように着飾った。彼女の好みは、黒や紫、赤等のはっきりした色。欲しいと言ったものは全て買い与え、家の一室がドレスで埋め尽くされる程だった。
 ロザリーナは、僕に女の姿をしろとは言わなかったし、寧ろそれを嫌がった。僕はそれだけでも居心地が良かったのだが、ロザリーナは僕の生い立ちや経緯等を聞いてきたりはしなかった。少し寂しく思う反面、どう返していいか解らない僕には好都合で、その分彼女に愛情を注ぐことを誓っていた。
 ロザリーナをサクリファイスにしたことは、彼女に伝えなかった。家に代々伝わる秘薬で、奇跡的に回復したと嘘を吐いた。ロザリーナへの罪悪感は幾つかあったが、それも次第に薄れていった。
 僕は、ロザリーナを騙すことで自分の居場所を作り、居心地の良さに甘え、その分彼女を甘やかし、愛情を注ぐことでそれを隠そうとしていたのだ。
 ロザリーナをサクリファイスにした事は、アーロンとクレメンティーナへの手紙で報告した。
 アーロンは、大いに喜んでくれ、盛大に婚礼まで行おうなどと提案してくれた。そして、ロザリーナに早く会いたいと書いてあった。
 クレメンティーナは、シャルルが幸せならそれで何よりだと書いてくれた。ただ、彼女にだけロザリーナに真実を告げていない旨を告白していて、それについてはいけないことだと咎めてあった。時期を見て、早い段階っで説明するようにとしつこく忠告してあった。
 この忠告が、何より大事なことだとは、この時の僕は悪い事だと思いつつもそこまで深く気に留めていなかった。ロザリーナへその分愛情を注ぎ込めば、それで許されるとさえ思っていたのだった。

 

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