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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

蝶を運ぶ風 後編

   

 アゲハ蝶~硝煙~、蝶を運ぶ風。完結。
 血塗られた暗殺者の運命。

 アウトローハードボイルドサスペンス!

 

「俺にはわからない」
 わかってる、つもり。
「龍、これはファジーと私の事。私はファジーに命をあげたの」
「…………」
 龍を見てたら、妙な疲労感が私を襲った。
 なんだか、疲れちゃったな。ファジーは自由、私もそろそろ自由になってもいい頃かもしれない。だけど、自分で自分に引き金を引くことも、ましてや撃とうとする瞬間の銃口の前に飛び出すことも出来ない、勇気のない私。
「生きるだけなら、このままここでこの生活を送ればいいよね。だけど、私は最後の最後まで〝人間〟でありたいんだ」
「人間?」
「善悪は水波の如し、ってね。組織では悪でも、ファジーにとって善ならそれでいいの」

 私は手を汚しすぎた。
 汚しすぎて、心まで汚れてしまった。
 組織から出れば、自由というプレッシャーに耐えかねて壊れてしまうことはわかってる。
 だからこそ、ファジーに全てを託したかった。

 ふいに龍が問うた。
「キティは、生きたい?」
「え?」
「キティ、お前は生きろ。もし組織がファジーを捕まえることに手こずるのだとしたら、否、手こずる筈だろ?そうしたら、真っ先に俺等二人に疑いが掛かる。お前は、ファジーの為にここにいなきゃいけない。もしファジーが万が一にでもここに戻らざるを得なくなった時の為にだ」
 龍が、いやに明るく笑っている様に見えた。そう、全てを消却してしまったかのような、そんな爽やかな笑顔だ。
「……ちょっと、アンタ何言ってるの?」
 龍は続ける。
「俺も蝶を運ぶ風とやらになってみたくなったんだ」

 その言葉に、全てを飲み込んだ。

 龍は……ただ龍は人間でありたかっただけなんだと。
 人間らしくいたかっただけなんだと。

 龍が組織を裏切ったのは次の日。組織の人間を撃ち殺して逃亡した。
 何も残さず忽然と姿を消したファジーを後回しに、龍が優先的に組織から追われる羽目となった。

*****

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

アゲハ蝶 〜硝煙〜<全2話> 第1話第2話

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