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ラブストーリー

BAD=CHILD 8

   

 霧樹と実夏が考えた逃亡作戦、それを成功させる。警察の包囲網から逃げだすが、思いのほか警察の動きが速かった。
 そして見つかってしまう。しかし、霧樹は実夏を逃がす。警察の前に立ち塞がるのは、保護されるべき少年、霧樹だ。追跡の手から時間稼ぎをする。ここで霧樹が保護されても、実夏とどこかでまた連絡は取れるはず。そう見込んでの盾になることを選んだ。
 警察と霧樹は対峙し押し問答を続けるが、その光景を逃げながらも見ていた実夏は、後ろめたさに引き返してしまう。
 実夏の姿を小田だけが視界にとらえていた。すると、小田は拳銃を握り締め、銃口をむけた。
 小田の正義心の前に、疑わしい悪人はどんな理由であれ成敗される。

 二人の運命は一人の刑事の手によって大きく変わる。少年が大人へと成長できるかは愛する者がそばにいるからこそ成長できるというもの、そのことに気づくも大きな壁が霧樹と実夏を阻む。
 それぞれの終幕を迎えたとき、この事件の教示が見えてくる。少年は少年のままがいいのか、大人へ成長することで社会にとってどれだけ未来を築く礎になるのか。
 霧樹はその立場にいる。そんな少年が出した答えは、その決意はどのようなものなのか。
 
 遂に、クライマックス。

 

「警察は街じゅうを疾走している。ぼくたちの作戦はうまくいっている。このままぜったいに逃げきってみせる」霧樹はぶつぶつとひとり言を言い放つ。
 実夏と小屋のところで別れ、警官隊に見つからないようにそれぞれが走りつづける。実夏を前方に身を低くさせながら走らせていた。視界にやっと入るくらいの距離感を保ち、後方に霧樹がゆっくりと走っていた。これは、霧樹が囮となって、実夏のみを逃がすというものだ。そして、小屋から割りと離れたところにボート乗り場があり、そこから海上脱出を計る。霧樹は警察に保護されるも、連絡がとれるよう電話番号と住所を教えていた。逃亡資金も底を尽くはずだ。そのときに年下だからと言わず頼ってほしいと申し出る。ここが霧樹が成長した精神面だ。肉体的な成長を実夏がきっかけを与えてくれた。その甘美さを霧樹は手放したくない一心で必死に作戦を考えたのだ。

 しかし、思ったよりも、警察の捜査網は迅速に進んでいた。そこで、あまりにも手がかりがなく、そして小屋の床下の穴から逃げて、街中の下水道まで通じているが、小田の直感が働いた。どうしてもこの下水道を通った形跡がない。小屋のなかですでにトラップがあったのではないか、と推察した。そして、地上を捜査するよう命じる。だが、街中もその影はみつからない。行き詰まった捜査は、原点にもどる。と小田は、大桐と松仲に教わっていた。
 とうとうその影を捉えた。
「いたぞ!」警官のひとりが叫んだ。長い髪がなびく。その人物は、野々原 実夏だった。警官隊が追走する。小田もそのなかにいる。が、前方に立ちふさがる勇者が両手を広げてにらんでいた。
「カミジョウ キリキくんだね?」警官のひとりがいった。その少し後ろに小田が紛れ込んでいた。
 警官は対話をつづける。「どくんだ。あの女は犯罪者だ。いま捕らえないとならない」
「ダメだ」霧樹は反論する。「彼女は渡さない。そして、ぼくたちに干渉するな。この逃走が成功したのち、ぼくたちはふたりで生きていく」
 暮蛇がぽつりとことばを漏らす。「洗脳されたのか、このガキは」
「いいから、きみは関わるな。そして、家にもどって義務を果たせ、それがきみの立場というものだ」警官は大人として少年を諭すようにいう。
「やるべきことは、社会ではない。いまのこの矛盾な逮捕劇に幕をおろす。真の犯人ではない。彼女は利用されたんだ。あなたたち警察がもっとよく捜査すればいい。ぼくは彼女を信じている」霧樹はあくまでも対抗する。
 暮蛇が先陣にでた。「キリキくん、いいか、野々原は横領はまちがいなくその手で犯した。それはゆるぎない事実で真実だ。殺人未遂がだれの手で起きたかはわからないかもしれない。それはこれから捜査する。もっとも捜査している。だが、身柄を拘束しなければならない状況なんだ。われわれ警察は犯罪をしたと疑いのある者を野放しにするわけにはいかない。職務をまっとうしている」
 霧樹に返す言葉がとまった。
「もし」暮蛇がつづける。「いま考えているのなら、大人としてきみにわかってもらいたいことがある。それは逮捕されることが終幕ではない。身柄を拘束してそこからが犯罪をした者がスタートに立つ。真偽を天秤に図られる。正当な審判がくだる。もしかしたら無実になるかもしれない。そしたら一緒に生きていくという信念の願いも叶う。そうだろ?」
 霧樹の両翼は折れはじめていた。
 暮蛇の説得は言葉巧みだった。小田は、この男は詐欺師級のペテン野郎であるな、と見据えていた。
「少年でなく、成長したきみならわかるはずだ。ここから先は、なにが正しき行動かを。きみにはわかるはずだ。よく考えてみるんだ。野々原にとって一番最良な判断がなにか、よければそれをきみが説得してみたらどうかな。野々原へむけて」暮蛇の提案はその場を治めるにはじゅうぶんな説得力がある。そして、その言葉にいい従わせるだけの力が宿っていた。
「ぼくが? 説得する? 逃げたい、いっしょに生きていきたいと願っているこのぼくが、逮捕されて正当な場所で戦うことを彼女に言いきかせるというの?」霧樹に反発はない。理解の再認識をするために暮蛇に向き直る。
「そうだ。きみにしかできないことだ」

 だれもが動きを止めていた。だが、小田の視界にとらえた影。その影は近づいてきていた。まるで霧樹を救いだそうとするかのように。小田は自身の手を腰に忍ばせた。眼光は鋭く、ターゲットへ向けられていた。だれにもきこえないほどの小声でいった。
「もういい、一瞬で終わらせる」

 

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