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歴史・時代

ハヤブサ王 第3章 〜皇女たちの憂鬱(3)

   

 オオサザキ大王の治世十一年。この年、長雨で村々が水没、畿内は危機に面していた。
 豪族が集まり対策を協議をするが、いっこうに決まらない。彼らは、大王の言葉を待っていたのである。
 そして、大王が発した言葉とは…。

 

 明けて、オオサザキ大王の御世十一年。
 その年は、三月の頭から降り続く長雨で河川が氾濫し、稲の作付けができずに困っていた。
 豪族たちは、宮に集まり議論を交わした。
「ようやく晴れ間も見えてきた。種を撒くにはいい時期だ」
「だが、先の河川の氾濫で殆どの田畑が流されてしまい、作付けすることもできない。残された田も水没して、水を抜くのでも大仕事だ」
「田畑だけではない。村そのものが水浸しになったところもある」
「うちの里では、家々が流されて、多くの死者が出た」
「どうにかしないと…」
 だが、結論は出ない。いずれも名の知れた豪族で、それぞれ力を持っている。だが、誰一人として有効な解決策を出さない。彼らは分かっていたのだ。意見を述べれば、その責任者にされる。上手くいけばいいが、失敗すれば全ての責任を取らされる。ひいては、中央政界から引き摺り下ろされる。
 みな、為政者であるという自分たちの責任から逃げていたのである。
 堂々巡りの豪族たちをじっと眺めていたのは、大王だった。
 オオサザキ大王は、あの鋭い眼差しで議論する豪族たちをじっと見詰めていた。
 豪族たちは、先程からちらちらと大王を見ていた。彼らは、大王の裁可を仰ぎたかったのである。もはや、自分たちではどうにもできないと分かっていたのである。
 沈黙が襲った。天の声を待っていた。
 ある者は己の膝をじっと見詰め、ある者は古びた天井を仰いでいた。ある者は冷たい床を眺め、ある者はふうふうと鼻で息をしていた。

 

-歴史・時代


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