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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

8月のエンドロール 15

   

事件後、初めての再会に、それぞれが変わっていることを知る。マリを助けようと意気込むシオリを止めるメグミ。そんななか、以前タイゾウがメールを送ったジャーナリストの池田から連絡があり、衝撃的な事実を知る。父・家光に連絡したタイゾウは、手の届かない現実にぶち当たり――
『手詰まり』配信

 

手詰まり

 三人で集まることを決めたのはタイゾウがシオリから連絡を受けた翌週の土曜日だった。
 なにをするともない三人であったが、退院したばかりのシオリを考慮してのことだった。シオリは大丈夫と言い張ったのだが、メグミがそれを押しとどめる形となった。早々に場所と時間を決めたのはタイゾウで、あとの二人がそれに賛同する形となった。
 当日。学校近くのファミレスに一番乗りしたのはタイゾウだった。ぐるりと見渡した店内は涼を求める客で昼過ぎとあっても混んでいる。
 店員の「お一人様ですか?」に首を振り、「三人。あとから来ます」と答えたとき、わずかに緊張が走った。
 実はメグミから連絡があったときも、緊張したのだが――なにしろ、メグミのことをタイゾウは知ってはいけない立場にいたのだから。それがたとえ警察署だけのことだとしても――それ以上に久しぶりの対面はそわそわして落ち着かなかった。事件後初めて会うメグミもそうだが、目覚めているシオリと直に話すのはこれが初めてなのだ。
 テーブル席に案内されたタイゾウが、グループチャットでメグミと、つい最近知ったシオリに着いたと告げると、二人とも向かってるという連絡が届いた。脇に置いた迷彩柄のリュックのなかには、シオリに見せるための古雅 劉生関連の記事が入っている。
 シオリたっての要望で、なにか知っているなら教えて欲しいという。
 動き回っていたのはタイゾウだけだったから、三週間の間に集めた資料を全部持って来た。
(シオリのやつ知ってどうするんだ? まさか、本気でマリを助けられるわけないし……)
 通された席は、入り口に近く、左手がガラス張りになっている。ガラスの向こうは駐輪場と駐車場。入道雲を抱いた空は、嫌になるくらい青い。入り口に人が吸い込まれていく様をぼんやりと見ていたが、ガラスに映る自分の肩に少し力が入っている。ふーっと息をついたときだった。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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