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ノンジャンル

幻影草双紙68〜トイレの恐怖(後編)〜

   

 トイレの話の続きです。
 食事時に読むのは、ご遠慮下さい。

 

 
 岡田幸二は、ほっとした。
(やれやれ、危機一髪とは、こういうことだな)
 今になって思うと、個室が空いていたのは、神様が助けてくれたとしか思えない。
 もし、すべての個室が使用中であったなら、大変な事になっていただろう。
(あれ……)
 岡田幸二は、ふと、思い出した。
 トイレの外から、個室を見て――。
 個室のドアが開いてるのを見て――。
 そして、駆け込んだ――。
 岡田幸二は、冷静に、考えた。
 個室が、かなり沢山並んでいた……。
 そして、小便器は見えなかった……。
 小便器が見えなかった……、なかったのである……。
 個室が、沢山ありすぎる……。

 岡田幸二は、愕然とした。
(ここは、女子トイレじゃないか)
 便意に気を取られて、男子トイレと女子トイレを確認しなかったのである。
(まずいぞ。早く出ないと……)
 その時、ドアが開く音がした。
 ハイヒールの音がする。
 そして、個室が閉まる音がした。 
 岡田幸二は、耳を澄ませた。
 もちろん、彼女の用足しの音を聞くためではない。
 彼女が出ていく気配を、聞き取るためである。
 トイレの中に誰もいなくなるのを、耳だけで探るのである。
 やがて……。
 水が流れる音がした。
 個室のドアが開く音がした。
 ハイヒールの音が遠ざかり……。
「あら」
「ま、すみません」
「こちらこそ」
 入れ替わりに、誰かが入ってきたのだ。
 新規参入者は、個室へ入った。
 そして……、水が流れた後、声がした。
「あたしよ。元気? そう、それ知っていたの? あれ、さぁ」
 なんと、携帯電話で話しているのである。

 

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