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幻影草双紙70〜恐怖のトイレ(後編)〜

   

 トイレを舞台とした話の続きです。
 食事時に読むのは、ご遠慮下さい。

 

 
 ホームの脇に、トイレの位置を示す矢印があった。
 あこがれの看護師国家試験合格証よりも、さらにまぶしく輝いて見えた。
(よし、もうすぐだ)
 矢印の先に、トイレへの入り口があった。
(ちっ)
 まだまだ、苦難は続くのであった。
 トイレの入り口と思ったのは、渡り廊下であった。
 10メートルほどの渡り廊下である。
 その渡り廊下の先が、トイレなのである。
(くっ……、まだ、まだ、出ないで……)
 尻をすぼめて、内股で、じりじりと歩く。
 ようやく、女子トイレのドアにたどり着いた。
 ものすごい勢いで、ドアを開ける。
 個室が並んでいる。
 もちろん、最短の個室へ、入ろうとした。
(あっ)
 便器が壊れているのであった。
 次の個室。
 そこは、汚物で汚れていた。
(もう……、このう……)
 小向亜矢子は、一気に、いちばん奥の個室へ向かった。
 いちばん奥ならば、あまり使われていないだろう。
 だから、壊れてなく、汚れてもいないだろう。
 差し迫る便意の中で、異常に敏感になった思考回路で、こう考えたのである。
 果たして――。
 そこはきれいであった。
(出る……、出る……)
 小向亜矢子は、ドアを閉めるのももどかしく、スカートを脱ぎ始めた。
 こういうときに限って、チャックが引っかかる。
(ええい、もう……、出ちゃう……)
 チャックが動いた。
 スカートを下ろす。
 パンティを下ろす。
 腰を下ろす。
 この一連の動作は、オリンピック選手級の早業であった。
 お尻が、便座に付いた。
 そのとたん、ほとばしり出たのであった。

 小向亜矢子は、大きなため息をついた。
 危機一髪とは、このことであろう。
 ようやく落ち着いた小向亜矢子は、ハンドバッグから携帯電話を取り出した。
「もしもし、あっ、お母さん」

 

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