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SF・ファンタジー・ホラー

サクリファイス クロニクル編19

   

男に対し、執拗に敵意を向けるカサンドラ隊に対し、カサンドラ隊の正体と本来の目的を探り出すため、ロザリーナがある計画を考えるのだが。

サクリファイスと呼ばれる怪物を描いたオカルトゴシックダークファンタジー!

 

 フランス革命期、女性の立場は一時的に向上するも、多くの人間の中から女性に対する差別を拭い去る事は不可能に等しかった。そして、それも束の間のうちに終わり、革命後にはナポレオン法典により再び女性差別がなされた。
 成人後は差別なく平等に権利能力を認められるものの、結婚後の女性は法的能力を失い、無能力者とされ夫に従う義務を課せられた。夫は妻の保護義務を負い、妻は夫への服従義務を負う。
 ロザリーナが僕の身体を手にした事で、僕はロザリーナへの服従を義務付けられたことになった。彼女が罰と言ったのは、そういう意味であった。
 そして、頭の悪い僕は気付くのが遅かった。ロザリーナをサクリファイスにすることで、僕は彼女を手に入れ繋ぎ留めたかっただけであったが、結果として僕は彼女に僕への服従を義務付けたことになっていたのだ。
 僕らが、人間と結ばれることはないだろう。限られた時間を生きる人間の一生は儚すぎる。共に歩こうと思ったら、サクリファイスにするしか方法は無いのだ。そして、サクリファイスになってしまえば、自由な交流など望めなくなる。僕以上に、ロザリーナはそれをよく解っていた。
 翌日、あべこべのまま、僕等は村へと食事に出掛けた。着いて早々、人々の波が僕ら二人を端へと追いやり、道の真ん中に道を作っていく。そこへ、馬の音がした。
「また、薔薇十字団だよ。最近、多いなぁ」
 村の男が、呟いた。
「どういう事だ?」
 僕が男に問うと、男は僕を睨みつけ
「女は、知らなくてもいい事だ」
 と吐き捨てた。そして、ハッとした。これが女の身体であるという事なのだ。女は口出しするな、黙っておけ。それが、暗黙の了解であった。
「失敬、ムッシュ。連れが失礼した。どうか教えて頂けませんか? 薔薇十字団のこと」
 ロザリーナが、同じ男に言った。
「あんたは?」
「この近くに住む、夫婦です。妻は少し怖がりなんですよ。それに、私の躾が悪くて申し訳ない。薔薇十字団を度々見かけていたのですが、貴方が先程最近多いと呟いたのを聞きましてね。失礼にも、何があったのかこうしてお聞きしている次第です」
 男は、苦いモノでも口にしたかのような顔をしながら話した。
「奴等は、前々から不老不死の人間とやらを探してこの辺りをウロウロしていたんだが、宿屋や食事の安いこの村を拠点にしていたんだ。ただ、それが最近、その不老不死の人間がこの村に立ち寄った形跡があるとかで。こうして、情報収集をしながら巡回しているんだ」
 カサンドラ隊の動きが停まった。カサンドラの部下である女性が一人馬を降り、村人である男を殴り飛ばし、再び馬に跨ると動きを再開した。
「あれだよ、あれ。女隊長さんは、女を差別するんだ。きっと、あの男。女を乱暴に扱ったんだよ。迷惑な話だ。御陰で妻も、影響を受けて『これからは、女の時代が来るよ!』とか、なんとかほざきやがる。何一つ出来ないくせに」
 ロザリーナは自分の顎に指を当て、男の言葉を考えるように聞いていた。
「この部隊は、不死身の人間を捕らえるのが目的ではないのかい?」
 男が言った。
「そう聞いてるけどね、詳しくは知らないよ」
 言うと男は、その場を去ってしまった。
「……シャルル、少し調べてみましょう」
 僕の頭の中で、三百年前の悪夢が蘇った。
「嫌だ。やめとこう」
 僕は、ロザリーナの腕を引いた。
「お腹が空いたよ。早く何か食べて、さっさと帰ろう」
「シャルル、顔色が悪いわよ」
「僕の顔色は、元から悪い方だよ」
 ロザリーナは頷き、僕に従った。

 

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