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20XX年、世界中の経済を裏から支配しているのは「杉谷満月カンパニー」だった。

ほんわかしたネーミングからは想像もつかないような権力と軍事力を持っていて、あらゆる国家すら太刀打ちできないほどの実力がある。

しかし、そのことを知っているのはごく一部の本社社員のみで、秘密を知る人間は必然的にあらゆる面から統制がかけられていた。仕方がないこととは言え、社員たちのストレスはいかんともしがたいほどに溜まっていた。

そんな社員たちが楽しみにしているのが、「卒業」前の「パーティ」である。その会場では何を言ってもいいとされているのだ。

正田 茂もまた、日頃の不満をぶちまけてやろうと、意気揚々とパーティ会場に向かうのだったが……

 

「杉谷満月、あなたのあらゆるニーズにお応えする杉谷満月。お歳暮から手切れ金まで何でもお申し付け下さい。我々はあなたの忠実な下僕です」
 本社のエントランスに流れる悪趣味なCMを眺めながら、正田 茂は深いため息をついた。
 思えば「入社」して二年十一ヶ月、この手の感情を抱かなかいで済んだ日はない。
 世界が二十一世紀と呼ばれるようになった数十年、正田が所属する「杉谷満月カンパニー」も、ひそやかだが着実な成長を遂げてきた。
「外」にいても、一万人近い社員を抱えながら経営者の顔がまったく見えない、CMだけはやたら派手で悪趣味というこの企業の存在は嫌でも目に入る。
「頑張らなくても大丈夫、頑張ればもっと大丈夫!」、「将来を大事にしたい方にもいいかもね」、「事業計画は予定、予定は未定です」などのインパクトは強いが何を言っているのか良く分からないフレーズに彩られながらも、どこの企業よりも圧倒的に待遇の良い求人広告も、就活生の目を惹く。
 早い話、お騒がせ型の大企業というわけだ。
 しかし、何しろ給料や福利厚生が充実しているので、就職しようという人間は極めて多い。
 そんな企業に選ばれた正田は、対外的には幸運だと言えるかも知れない。
 しかし、彼が内心抱いている感情はまったく別のものだった。
「よう、相変わらず沈んだ顔してやがるな。これ飲んで少しは元気出せよ」
 声をかけられ振り向くと、先輩の柳の顔があった。
 正田よりも三つ年上で誰に対しても気さくに接してくれる。
 彼がいなければここにいるのはますます辛くなっていたことだろう。

 

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