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ラブストーリー

なりあがる! 9

   

 広間に現れたのは、”大神の御子、冠木 小梅(かぶき こうめ75歳)”とかなめ嬢、草輔、№1執事、時倉 相馬(ときくら そうま32歳)も登場した。
 馬駒が犯人。と疑われていたが、反発も反論もすでに馬駒は言葉にしなかった。彼は罪を被ることを選んだ。そうすることで奥様の逆鱗を静め、かなめ嬢の幸福を願う母の思いからくる愛たる犯行といってもいい。それを察した。つまり馬駒とでは幸福にはなれないと。それをわかったから馬駒は黙したのだ。
 しかし、”大神の御子”はだれであろうと関係がない。罰は不問と処す。ジェネラルスターダイヤモンド盗難事件のジャッジをくだした。
 
 かなめは夫候補の馬駒の疑いが晴れたことに微笑んでいた。このときはじめて馬駒がどういう立場でいるかが露呈される。ふたりが仲睦まじく話す姿は恋人同士のようにみえる。従業員たちは馬駒への見方が変わりつつある、そんな日でもあった。

 

「その辺にしておきなさい」
 広間に現れたのは、年配の女性だ。ひらりと羽織るガウンを身に着けている。
 馬駒にとっても見覚えのある人だった。
「あのひとは?」
 城谷が答えをだす。
「大奥様…」
「え? 大奥様?」
 馬駒は思い出した。庭園で家政婦姿の老婆と瓜二つ。しかし、その女性が、冠木家最高権力発言力決定権を持ち、現在はご意見番として冠木家の未来の安泰を高みから見守っている。息子の草輔、旦那様よりも実権を持っているその人だった。
 背後には、かなめ嬢と旦那様もいる。そして、№1執事、時倉 相馬(ときくら そうま32歳)がいる。と、神永がぼやくようにその名をつぶやいた。
「あのひとが冠木家№1執事か」
 昨夜声だけはイヤホンから聴こえていたが、がやはりどこかで見覚えがある男だった。「やっぱりRAKUJYOU文具社で見かけたことがある。あの胸に飾られたトランプのモチーフ」
 馬駒は視線を大奥様にむける。
「あの老婆がまさか、おれはタメくちきいてやばいよな。犯人に仕立て上げられたことよりもやばいくちをたたいた」
 馬駒は庭園で花の手入れを教えてもらったことを思い出していた。

 大奥様と呼ばれているが、数あるパーティーや雑誌、メディアでご紹介されるときは、”大神の御子、冠木 小梅(かぶき こうめ75歳)”と。
 冠木財閥の最高ご意見番として実子の旦那様の指導をいまだに指示し、影で助言やフォローをしている凄腕の持ち主だった。そのため冠木財閥の業績が傾くことはない。様々な企業や政治家に顔がきくお釈迦様のような存在だった。
 早朝に冠木家で花の手入れをするが、日中はもっぱら出掛けていることが多い。馬駒が見かけないのはそのためでもあった。
「もういいでしょう」
 大神の御子は奥様にいった。
「なぜ、ここまでの騒ぎにしたのですか? みっともないことだとは思いませんか? なつめさん」
「それは」
 借りてきた猫のようにおとなしくなる奥様。
「ですが、私は娘のかなめが幸福になってもらいたい。そう願って…」
「彼は犯人ではないわ。わたくしが庭園でみていたから」
 大神の御子の証言はたしかなものだった。それは、かなめも同時にみていた。そのときに、小梅に話していた。馬駒がどうやってこの冠木家の執事として勤めることになったか。その経緯を話したのだ。
 そして将来は、”自分の夫候補”だと話し聴かせていたのだ。

 神出鬼没の大神の御子、小梅は家政婦の格好をして花の手入れをしている。それをすでに馬駒が教えられたとおりに作業をしていた。そこにかなめが声をかけるわけでもなく黙ってみつめていた。孫は祖母に告白した。
「将来の夫になってほしいひと、わたしの心はひとつ決まったこと。まちがいだと思いますか?」
 祖母は優しい温かみのある微笑みを浮かべた。

 

-ラブストーリー


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