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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

8月のエンドロール 19

   

家光の内部リークが効を奏し、姫子の首に手がかかる。タイゾウ、メグミ、シオリの三人はそれぞれの朝を過ごしていた。だが、シオリにマリから連絡が。不穏な気配に飲まれようとする子どもたち。一方の大人たちはそれぞれの進退を決めていた。やがて交わる大人と子どもの時間――
『王手と凶行』配信

 

王手と凶行

 全国区となった事件は、もはや手の届かないところに至った。
 当初遭遇した比野女子生徒暴行事件は姫子という女が引き起こしたひとつの面でしかないことが判明し、姫子の過去の所行を、それがいかに非道であったかをニュースは声高に叫んでいた。比野にあるシオリの家も割り出され、なんとかインタビューを試みようとする放送局もあった。
 一晩汗だくで走り回ったタイゾウはそろそろ日が高くなり暑くなる七時頃、なんの収穫もないまますごすご家に戻ってきた。
「ただいま」
 そろりと玄関を閉めると、リビングから日射しに混じってきついLEDの明かりが廊下にはみ出していた。エナジードリンクで無理やり起こしている疲れた身体で覗き込むと、母がテーブルに突っ伏して寝ていた。エアコンが効き過ぎていて、底冷えするように寒い。引っ越し作業の途中だったらしく、梱包された荷物がそこかしこに置いてあった。ダイニングはがらんとしている。もう引っ越し業者に頼んだのだろうか。とすれば、取りに来るのは今日か明日か。
(俺、本当に、東京に戻るのか……)
 突然手渡された現実に戸惑いつつも、母を揺すって起こす。
「風邪引くよ」
 まだ電源の入っている冷蔵庫のコーラを飲んでいると、ううんと唸って起き上がった母・江美は疲れ切って目の下が真っ黒の息子にぷりぷり怒った。
「どこ行ってたの! 電話かけてもちっとも出ないし! メールしても返さないし!」
「あーまあ、いいじゃん。てか、いつ引っ越しすんの?」
「もう! 今日の夜には業者さん来るから片付けておきなさいよ。こんな時期に引っ越しなんてもう!」
 母の文句を話し半分で聞き流し、早々にリビングを後にしてシャワーを浴びると、ぶっ倒れるようにベッドに倒れ込んだ。
 まぶたが引っ付く前に、グループチャットで

タイゾウ 収穫なし
マリどこにいるか分からねえ 7:19

 とメグミ、シオリに送るとイビキをかいて寝入った。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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