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歴史・時代

ハヤブサ王 第3章 〜皇女たちの憂鬱(4)

   

 丸邇氏の中央政界への復帰を狙うヒレフノオオミ。
 彼は、人柱政策こそが、その好機につながると考えていた。
 そんな中、彼のもとにワケノミコが訪ねてきて……。

 

 丸邇(ワニ)氏の族長ヒレフノオオミの屋敷では、族の主だった長老が集まり、人柱の件についての話し合いがもたれていた。
「一族から一人人柱を出す。まったく大問題よのう」
「嫌がらせであろう、大王の。こうやって、大王の力が神と同じだと見せ付けたいのじゃ」
「ご本人はそれでいいかもしれんが、人柱になるほうは大変じゃ。名誉とはいうが、残される家族も悲惨よのう」
 長老たちは、深いため息を吐いた。
「左様でございます。しかし、人柱を出さねば、丸邇氏は一段と大王から睨まれましょう」
 ヒレフノオオミの危惧も確かであった。
 ホムダワケ大王の時代、丸邇氏は大王に妃を出すなどして、中央での勢力を拡大していた。
 その勢いに乗って、大王の後継者争いではヒレフノオオミの娘であるミヤヌシヒメの息子、ワキノミコを推した。だが、ワキノミコは後継者争いに敗れ、自刃した。
 大豪族の後ろ盾がなければ、大王にはなれない。裏を返せば、大王家の後ろ盾がなければ、豪族が権力を集中するのは難しい。
 大王家と豪族の関係は、まさに持ちつ持たれつなのである。
 オオサザキノミコが大王なった。もちろん、オオサザキノミコを推した葛城氏が、宮内で強い発言権を持つようになった。葛城氏の族長ソツビコは、娘も后にして、いまや宮内で絶大な力を得ている。
 必然的に、丸邇氏は宮の末席に追い遣られ、政策に対して意見を聞かれることも、意見を述べることもできなくなった。
 今は、宮内に丸邇氏の席すらない。
 一度手に入れた権力は、どんな汚い手段を使っても逃したくないのが権力者であるし、権力を逃した為政者は、二度と日の目を見ることができないのが政治の世界である。
 これは、今も古代も同じこと。
 いや、古代から人間がさほど進歩していない証拠だろう。人間は、猿から人になった時点で、進化を止めてしまったのだろうか。
 一度中央から離れると、復活が難しい。足利尊氏のように、後醍醐天皇と争って破れても、再び復活して征夷大将軍となった人もいるが、大抵はナポレオンのような憂き目をみる(実際、ナポレオンも95日ほど復活しているが)。二度失脚して、三度中央政界に返り咲いたのは中国の鄧小平だけだろうか。

 

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