幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ノンジャンル

勝てる顔

   

喧嘩屋として知られていた清水 雄二だが、歳を取ったこともあって最近は負けが込み、後二敗で強制引退というところまで追い込まれていた。

意気込んで再起戦に臨んだものの相手に一発も入れることができないまま投げ捨てられ、その後は意識がなくなるまで殴られ続けるという惨敗を喫する。

担ぎ込まれた闇病院で医師、矢崎は清水に対して「勝てる顔をしていない」と言い捨てる。

だが、今まで貯めてきたファイトマネーの半分を支払えば劇的に勝率をアップさせることができるという。

藁にもすがる思いで清水は、「特別な治療」を受けることにしたのだが……

 

「ぐ、はっ!」
 背中から全身へと響いてくる物凄い衝撃に、俺はようやく自分が投げ落とされたのだと自覚した。
 体勢を立て直す前に対戦相手の男は、俺の腹に膝を落としてのしかかってきた。
 その動きだけでも奴が、何らかの組み技系格闘技経験者であることが分かる。
「清水、オラ、どうした!」
 俺の名を呼びながら男が殴りかかってくる。
 反射的に両腕を上げてみるが、敵の拳は完全にガードをすり抜け、俺の顔を叩いてくる。
 脆い顔の骨が直接痛めつけられる激痛と、地面と打撃のサンドイッチ効果によって脳が揺さぶられていく感覚は、瞬く間に俺の中から判断力と抵抗する気迫を奪い去っていく。
「何だよ、全然だな、お前は。さっさと引退しやがれ」
 相手の声が半笑い気味になってきたあたりで、こちらの意識が薄れてきた。何発殴られたのか、もう数えてもいられない。
 まったくひどい負けだ。こんな試合をしに今日ここに来たわけじゃあないってのに。
(ちきしょう……!)
 俺は呪詛の言葉を心中で呟き、遠のく意識に誘われるまま、目を閉じた。

 

-ノンジャンル


コメントを残す

おすすめ作品

更年期パラダイス【6】

返答

レギュラー・バット(前)

南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 最終話 埋蔵された巨謀(12)

怒りの値段(上)