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ラブストーリー

なりあがる! 14

   

 威嚇の発砲とともに現れた20人の樺庭の配下。圧倒的に不利な状況だが、そこに救世主が颯爽と登場。神永が、冠木家の執事合計40人連れて、形成は一気に逆転。

 怯むのは樺庭だったが、その樺庭に突如異変が。

 かなめだけがそのすがたを見たがガムテープ越しになにもいえず、救出する城谷と馬駒、そして時倉があることに気づく。
 解放されたお嬢様が告げた、樺庭の異変を。

 樺庭を、馬駒と時倉が追走する。かなめは城谷に守られるが現場の指揮に気をとられていた城谷のもとを去り、馬駒たちを追う。だが、このお嬢様の行動がのちに窮地に陥ることになる。

 ついに樺庭と対峙。その弱りきっている樺庭のすがたに勝利を確信する。
 主に捧げてきた哀れな執事、樺庭の人生が終わりを告げようとしていた。無常で非情なまでの冷酷な手法で主を守ってきた。
 だが樺庭は、いつも二番手であったことをどうやってもなりあがるために手を汚してきたと告白。
 時倉はそんなことをしなくても一番はおまえだ、と救いを述べるも樺庭は落胆とともに力尽きる。

 勝ちを確信した瞬間、時倉が一発の発砲音とともに倒れた。

 かなめがその場に現れた。馬駒はお嬢様が撃ったと、かんちがいする。その背後にいるのは、かなめ盾にして銃弾を撃った兼松だった。

 冠木のすべてを握るためにかなめを奪おうとする。それも卑劣なまでに。
 兼松に、馬駒は激昂する。
 最後の力を振り絞って立ち上がる樺庭が、馬駒に銃口をむける。裏切られながらも、主人に忠実に仕える樺庭。
 兼松は、樺庭に始末をまかせ、かなめを連れて逃げようとする。

 窮地にある馬駒はどうにか、チャンスを狙っていた。視界にはいる兼松の景色に溶け込む影、それが好機であると。
 時倉が”耐えろ”という。じわりじわりとその機会を待つ。

 遂に決着のとき迫る。

 

 一発の発砲は威嚇だった。だがその音を皮切りに闇に潜んでいた樺庭の配下が現れ、冠木陣営と肉弾戦に応じる。樺庭陣営は20人いる。多勢に無勢で圧倒的に不利な状況に陥った。
「われわれの勝利だ」
 樺庭の冷笑が感に障る冠木陣。しかし、それは一瞬で樺庭の表情を強張らせる。
「それはどうかな」
 反響する甲高い声が轟く。
「おそいぞ、神永!」城谷が叫んだ。
「すみませんね、でもたまにはカッコつけさせてくださいよ」
 神永が、ほかの冠木家の執事を先導して登場した。40人はいる。確実に勝っている。
 加治木がそのヒーロー的な登場に、舌打ちしていた。
「あいかわらず気にいらねーやつだな!」
「そうかい」
 神永は、加治木の背後に迫ってくる相手をみた。
「おい、後ろ」
 だが、それは加治木も神永の背後に迫ってくる相手をみて。たがいに背中を合わせになり、向かってくる樺庭の配下を交互にカウンターで打破し、死角の敵から援護し助ける。
「油断しすぎ」
「それはおまえだろ」
 神永と加治木がたがいの顔をみながら微笑んだのはこのときがはじめてだったろう。

 樺庭が奥歯を噛み締めていた。もう一度発砲すればこの場は沈静する。しかし、それいじょうの紛争を巻き起こした張本人がこの場でひざまずいた。
「くそ」
 かなめ嬢だけが、樺庭の変化に気づいた。ガムテープをくちに貼られて声にならないが、たしかにくちの動きはこういった。
”あなた、病気なの!”。
 吐血する樺庭の身体は、病に蝕まれていた。
「おりゃ~!」
 咆哮とともに城谷が突進してきた。
「猛突進!」
 なんの技かわからないが、ただの体当たり。だが、城谷の巨体と威圧的な迫力に定着した技法となっている。
 いっきにご令嬢までの道が確保できた。時倉がその後を走り抜けた。そして馬駒も駆け抜けてきた。
「とどいた!」
 馬駒がかなめ嬢のロープを両手でほどこうとする。
 辺りをみると、すでにそこには樺庭はいなかった。
 時倉は気づいた。床に血痕が滴っているのをみつけた。
「これは…」
「吐血よ、白樺の貴公子のね」
 ガムテープが剥がれ、身体を捕縛していたロープが解かれ、かなめ嬢が立ち上がっていた。
「そうか、そういうことか」時倉は悟った。
「どうしたんですか?」馬駒がいった。
「なにか理由があると思っていた。悪に手を染めてまでして、兼松のような人間に仕える義理がほんとうにそこまでの恩があるのだろうか?」時倉がいった。
「そうですね。おれだって、お嬢様にいくら恩があったって、その恩に報いるために人殺ししてこいといわれても拒否します」
 馬駒が胸を張りながらいった。かなめは傍らでのんきに、ご立派、と小さく拍手していた。
「正当な勝負ならまだしも、やはりひとを殺めてしまっては元も子もない。やはり、リスクを相殺できるなにかがあると思ったが、それは自らの死期が迫っているからだ」
 時倉は戦闘前の押し問答の答えにたどり着いた。
「そういうことか。だからあれだけ拒否していたのだな、あの男は」城谷がいった。
「とりあえず追いかけなきゃ、これで逃がしても解決したわけではない。せめて今回の首謀者として捕縛して警察につきだす。それが普通だ」馬駒が正論を言い放つ。
「そのとおりだ」時倉も同意した。
「残念だがな」
 悲壮感ただよう顔は、同じ優れた執事であるがゆえの同情だったのだろう。

 時倉と馬駒の二人が、樺庭を追走する。城谷はかなめ嬢を安全なところに逃がす役目を担った。
 同じフロアでの戦況は、確実に冠木陣栄に分があった。もう、城谷が戦力に加わることがなくても勝利は目前だった。が、城谷が場の指揮を怒鳴り声をあげて野次を飛ばしていると、かなめの姿がないことに気づかなかった。
「お嬢様、どこへいった?」
 周囲を見渡す城谷だが、影すらみあたらない。
「まさか…ふたりを追っていったのか」

 

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