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SF・ファンタジー・ホラー

サクリファイス クロニクル編23

   

アーロンと再開するシャルル。
しかし、アーロンとクレメンティーナの間には、長い時間によるすれ違いが生まれ始めていた。
そして、シャルルがサクリファイスになった理由が明かされる。

サクリファイスと呼ばれる怪物を描いた、ゴシックダークオカルトファンタジー!

 

 僕とロザリーナは、七日目にしてパリに到着した。カサンドラ達の動向を調べると、彼女達が到着する迄には、早くてもあと二日は掛かるだろう。
 僕等は、パリの宿屋に部屋を借り、暫くここで滞在することに決めた。
 部屋に入ってから、アーロンへと急いで手紙を書いた。本日パリに到着したので、早急に会って欲しい。そう、シンプルな内容だったように思う。
 この頃のナポレオンは、一つの歴史的事件に遭遇していた。勿論、アーロンも同行していた様に思う。
 歴史的事件。1799年11月に起こった、ブリュメール(霧月)のクーデターである。シェイエスらが統領として職務に入る際、議長として買って出たナポレオンが、第一統領として5年後の皇帝、ナポレオン戦争へと突き進んで行く事となる。
 実際のフランス革命は1794年に終わっているのだが、惰性で続いていた革命が今回のクーデターでナポレオンによって完全に終結された事件なのである。
 忙しいのは承知であった。少しでいいから、時間が欲しい。そう祈った。
 祈りは届き、翌早朝。アーロンからの速達が届いた。パリに構えるアーロンの屋敷に、今直ぐに来て欲しいとの内容であった。僕等は直ぐ準備を済ませ、朝食も取らずに飛び出した。
 アーロンの屋敷に到着すると、少しも動揺を見せないアーロンが出迎えてくれた。
「シャルル。久しぶりだね。マダム、ロザリーナも元気だったかい? 済まないね、こんな時間に呼び出して。私も忙しくて、こうでもしなければ時間が取れないのだよ」
 ロザリーナが、久しぶりのドレス姿で、深々とお辞儀をした。
「こちらこそ、お忙しいと承知で突然訪問しましたのに、身に余る光栄ですわ」
 アーロンは僕の肩に手を掛け、部屋の奥へと案内してくれた。そこは食堂で、テーブルには軽食が並べられており、奥に座っていたクレメンティーナが僕の顔を見て立ち上がった。
「シャルル! 元気だった?」
「また死んだけど、元気だったよ」
 それを聞いたアーロンが、笑い出した。
「その死んだ話も聞かせておくれよ。さあ、食事はまだだろう。朝食を用意したんだ」
 奴隷の女がロザリーナの椅子を引き、座らせた。全員が着席するのを見届け、アーロンは奴隷に部屋から出るよう告げた。食堂には、僕とロザリーナ、アーロン、クレメンティーナの4人だけとなった。
「さあ、邪魔者はいないよ。君達があんな遠いところから馬を飛ばして態々こんな街まで来たんだ。よっぽど重要な事があるんだろう。先ずは、単刀直入に話したまえ。雑談は、それからだ」
 僕とロザリーナは、目を合わせて頷いた。先ずは、僕からアーロンへ伝える事にした。
「薔薇十字団カサンドラ隊は、サンジェルマン伯爵……アーロンに目を付けた。今、彼女達はここに向かってる。早ければ明日にでも、パリに到着する筈です」
 アーロンの目が見開いた。僕は続けた。
「僕は、立て続けに不思議な体験を目にしました。本当に、300年前から、彼女達が蘇ったみたいだ。あの日、死んだ人達が、また、僕の前に現れた。あれは、亡霊なんだろうか? 全てに、錬金術の印が残る。錬金術の亡霊かもしれない」
 アーロンは、ワインを飲んだ。
「……シャルル、その話は、今はよそう。他に知ってることがあれば、教えて欲しい」
 アーロンは、何か知っている気がした。
「私から」
 話題を変える様、ロザリーナが話し始めた。
「カサンドラ隊は、カサンドラを中心とした女だけの部隊です。カサンドラは、努力と幼い頃に男に買われた恨みを糧に必死で今の地位まで上り詰めた。けれど、薔薇十字団は女に対し、やはり良く思ってはいないのでしょう。はっきり言えば、信用がなかった。だから、お目付け役として別に男の部隊を置いたんです。副隊長となってますが、本来は隊長であるエイハブが全て男に対する権限を持っています。カサンドラが滅びれば、エイハブが隊の権限を握れる。何か瑕疵があれば、エイハブが隊長となれる。エイハブはその機会を常に伺っているのです。クーデターは、いつ起こってもおかしくない状態です」
 そして、ロザリーナは悲しそうな目で言った。
「……この情報を得るため、私は……」
「僕は、カサンドラに処刑された。だから、僕は生きていることを隠して旅をしてきました。もしかしたら、カサンドラは道中、僕が生きていることに気付くかも、もう気付いているかも知れない」

 

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