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ラブストーリー

奏でる愛と書き綴る愛! 3

   

 美袋プロデューサーは、千寿に連続ドラマの話を持ちかける。それは千寿が監督兼脚本家であることにスポットを浴びさせるためだ。

 連ドラの音楽ができたとヤマトから電話がくる。その声はどこか暗かった。切羽詰った印象。不信感がありながらも、その音楽を視聴した。

 後日、ヤマトのバンド、”メロディアス”の解散が報じられた。
 ヤマトの置かれていた状況を察する千寿。だが、なにもできない。
 連続ドラマの一話の視聴率が好調だったが、奄美が助監督として参加した。作品をナンバー1にするために。
 なぜ協力するのか、それは奄美の一方的な告白に千寿は唖然とする。しかし、共に仕事をしていくうちに、ふたりは距離を近づけ向上させていった。

 千寿は幸福感ある日々に忘れていた。ヤマトのことが突如、脳裏をよぎる。三ヶ月音沙汰がない。
 バンド解散以来情報がない。だが、ヤマトが引退する情報を得た。
 妻、そしてバンド、スタッフ。それらを失って、孤独に打ちひしがれるのは、おそらく初めてのことだろう。

 千寿は戸惑う。どうすべきか。そこに奄美が助言する。日常でも助監督なのだ。

 電話をするが、ヤマトはでない。閉ざされた壁をどうこじ開けるか、千寿は迷って涙をする。

 

 千寿は、派遣社員としてヤマトとともに働いていたとき、こんなことをいわれた。
「派遣期間が恋愛期間だ」笑ってみせるヤマトの心情は、すでにこのとき空っぽだったのだろう。
 言い寄ってくる女たちに復讐ではないが、心のない期間限定恋愛を繰り返している。千寿は脚本家ではわからなかったが、監督としての目でみると、ヤマトはいまだに傷が癒えずに、苦心しているのが痛いくらい伝わってくる。だからあれだけの敵意をみせるのだ。
”どういう生き方で、なにを隠して、世間を欺いているか”、それは個人的な問題で干渉すべき領域ではない。
 酒で交わすときに近況だけでもきければそれだけでいいのだ。
「ヤマトさん」千寿はいった。「こんかいの映画、成功させましょう。最高の音楽、たのみます」
 淡々とうなずくヤマト。
「あったりめーだ。俺に任せとけ。舞台挨拶もいくからな」

 ヤマトの宣伝効果で「個人の価値たる犯罪」は、脚光を浴びるものの、人気は低迷だった。映画館の客入りはほどほどだった。が、じょじょに右肩あがりに収益が増えていった。ロングランで一躍ヒット作品にのしあがった。
 それは、千寿が映画が世間に公開するのは、撮影から半年後ほど経ってからだ。
 名のない監督に、いくら有名なヤマトが音楽担当としても、音楽は良いが、映画は? というような図式になる。

 公開前に、ドラマの監督も引き受けることになった千寿。またしても、敏腕プロデューサー美袋が話をもちかけてきた。
「連続ドラマの監督をやってくれないか!」
 映画がまだ公開前だというのに、ここにきてドラマって。と千寿は思った。
 しかし、それなりに美袋の考えが、いや企みがあることに気づいた。
「宣伝効果がまだ足りない。なにしろ、ヤマトが音楽担当でもそれを公表したのは一年ほどまえだ。現状のインパクトがやや欠けている。今年は今年のブームがある。だからひとつ提案がある。それが監督、脚本を手掛ける人気作家。千寿 尊として今季の連続ドラマが宣伝効果になる。ちょうど最終回の時期に映画公開。いい宣伝ではないか」
 と大笑いする美袋だった。
 千寿は、ただただ関心するばかりだった。呆然とくちを開いていた。
「それで、どんな作品を?」
 美袋はいやらしく微笑む。「鑑定士・緋影 零時(ひかげ れいじ)だ。知ってるか?」
 千寿はうなずいた。脚本家ともなれば多種多様の小説から原作という形で脚本を手掛ける。そのため、練習と進歩ために自分自身で気になる作品を脚本してみるという作業を幾度となく進めていた。美袋が提案した作品ももちろんそのリストにはいっていた。一番好きな作家だったこともある。
「ええ、いずれ自分なりに脚本してみようと思ってました」
「それはいい! ならやってみるんだ、いいな」
 問答無用だった。前向きな意思は意欲となって、関係者に伝染し進行してしまう恐ろしさを感じとった。
「もちろん、音楽担当はヤマトさんにやってもらう。おまえからも頼んでおいてくれ、がんばってちょ!」
 有頂天過ぎるこの男のテンションにいくらか操作されているのではないか、と疑問を抱きはじめる千寿だった。

 連続ドラマが決まって撮影を開始することになった。が、前回の映画監督時にくらべて風当たりはいくらか通りがよかった。スタッフが千寿にむけてさきに挨拶をしてくる。
「気分がいい。映画も公開間近だし、なんか世間に知れ渡っているのかな」
 美袋の有頂天が移ったように、ご機嫌の千寿だった。
 スタッフをよくみると、新米が多いのがわかった。ベテランスタッフはやはり一緒に仕事をするのが抵抗があるようで、千寿の下につくのを拒んでいた。
「道は長い、ってことか」千寿は天を仰ぐようににらんだ。

 

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