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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<4> 〜消しゴムフレンズ〜

   2015年3月27日  

小学校の頃、バトル鉛筆や変わった消しゴムを集めたことなかった?
今回は私、百代のかつての後悔のお話。
それには面白消しゴムっていう、おもちゃのような文具が関わっているんだけれど、それ、集めたことない?
喉元過ぎた後悔はそれはそれは効いてくるものよ。
『消しゴムフレンズ』開店します。

 

消しゴムフレンズ

 たらたらと陽気な音楽がラジオから流れる午後。作業台でまどろむように店番をしていた百代さんの睡魔を打ち払うかけ声ひとつ。
「ちわーす。お世話になりまーす。すすき野でーす」
 文具卸のすすき野に勤めている大杉君が、引き戸を開けてぺこりと会釈した。
 仕入れ全般を百代さんは自分で行っていたが、すすき野さんには自由に選んで欲しいと言っていた。すすき野さんの選ぶ文具は珍しい物が多く、それがモモヨ文具店に独特の彩りを与えてくれるのだ。
「はぁーい。どうもー」
 伸びをしながら出迎えると、すすき野さんの若手である大杉君は、大きく口を開けて笑った。俯いて喉を鳴らすでもなく、にかっとした若者らしい笑みだった。
「昨日も飲み会ですもんねえ。ここの商工会のじいちゃんばあちゃんは元気よすぎっすよね」
「まったくねえ。いくら夏だからって連日連れ出されてもねえ」
 微笑む百代さんは、大杉君のおろした箱のチェックに取りかかった。
 伝票片手にひとつひとつチェックしていくと、あら……と消え入りそうな百代さんの声がもれた。おやと大杉君は耳を疑った。心なし百代さんが沈んでいたのだ。
「これ、廃盤だったんじゃないの?」
 小袋がみっちり詰まった袋を取り上げると、大杉君に見せる。
「それっすか。消しゴムっすね。ちょっと待ってくださいね……」
 腰に吊り下げた確認伝票をたぐり寄せると、数枚大杉君はめくる。
「復活したらしいですね。なんでも熱烈なファンが多いからって。――なんかあったんすか?」
「ううん。もう昔のことなんだ……麦茶、飲んでいくでしょ?」
 言って、百代さんは左の後れ毛を耳にかきあげた。
 その横顔は透きとおった琥珀色の後悔に満ちていた。

 

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