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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

御影探偵の推理〜人捜し編

   

 探偵見習いの御影(みかげ)は、助手の輪都(わと)と共に、人捜しを依頼された。質素な印象の外見である母、娘ふたりの3人。
 10年前に失踪した父(祖父)を捜してほしいと。
「今になって?」御影はとうぜんに質問する。
「家族だから」この言葉の意味が不信感につながる。ならリアルタイムに捜索願とか警察にかけこむところ。世間の目とかを意識してのことか。
 不自然すぎる母娘たちだ。

 だが、依頼があったいじょう探偵は引き受ける。御影もつまらない人捜しにやる気はない。ほんらい頭脳、知識、感性から殺人事件の犯人を追い込むというカッコイイ探偵を演じたいことを願望にしていた。しかしこれもまた探偵の仕事。浮気調査、ペット捜しじゃないだけでも我慢して職務を果たす。

 意外と早くみつかった。依頼主に報告するとすぐに現れた。しかし、母娘の3人の風貌に疑問を持つ。

「家族」
 その意味は家族を助けることか、家族だから助け合うものか、それとも家族だから犠牲がつきものなかのか。

 御影たちはその疑問にむきあう。

 

 東京都新宿区にある、氷室探偵事務所に訪れた女性三人組。パッとみた感じでは、女子大生三人組に見えた。そんな女子大生が探偵事務所に依頼にくるのはたかがしれている。
 訪問場所が異なるのでは? と、いつも探偵見習いの御影 解宗(みかげ ときむね23歳)は追い返したい衝動に駆られる。
 それは、浮気調査だ。
 ガッカリくる。御影が受け持つ依頼は、頭脳を駆使して推理する殺人事件の犯人を追い込むという依頼のみに限定してやりたい。
 だが、そこは大人として社会人としてのマナーといえよう。
「いらっしゃいませ。みなさんは学生さんかな?」
 御影は女性をたてながら話すのが、苦手なのだ。適当にいっているのは、いつかバレるという迂闊な洞察力しか持っていない。御影の眼光は、犯罪にのみ活躍する。

「いえ、わたしがこの娘たちの母親です」
 真ん中にすわる女性はなんと、50代だというのだ。黒髪のショートボブ、化粧は薄くて皺のない肌艶は、とても申告している50代にはみえない。引き締まったスレンダーな体形で、茶色のワンピースを着ている。
「はい! あ、そうでしたか、すみません。お若いですね…」
 愛想笑いをするのも接客業の心得というものだ。
「こっちは姉のアケミ」
 御影と対面して左側にいる女性だ。30代中盤だという。肩に掛かるくらいのストレートヘアーで黒一色。母親と体形が同じで痩せている。濃紺のジャケットと黒のスカートだ。
「で、こっちがヒトミ」
 御影と対面して右側にいる女性だ。おなじく30代前半だという。胸までのややブラウンに染めている髪。痩せ型で、細みのブルージーンズにワイシャツとカーディガンという格好だった。
 桜がもうすぐ咲く頃だ。それにしても3人とも薄着だと思った。

 それより、まいった。全員が御影より年上なのに、年下の学生扱いをした。これはまちがいなく”浮気調査”の依頼にほかならない。
「やってられないな」と御影のくちから空気だけがそう漏らしていた。
 真ん中の母親の名を尋ねた。
「わたしは、サトミです」
 とりあえず3人のプロフィールはわかった。都内の西側、八王子方面に住んでいると。 仕事はそれぞれなにをしているかは、どういうわけか詳しく話してもらえなかった。はぐらかす意味がなにかあるのかはわからない。詳細な住所も聴き出せなかった。依頼内容を遂行して依頼料をいただければ探偵事務所としては申し分ない。
 ある意味、たがいに素性は隠して任務を遂行したほうがあとあと、いざこざがあっても関与せずにすむからだ。
「それで本日はどのような依頼ですか?」単刀直入に御影は話す。
 3人はそれぞれが目を合わせて、ためらっている。
 御影はその間、ジッと待っているが、もったいつける女のこの態度と間が、イラつきを増加される。別に短気な性格ではない。積極的に話を進めてくれないとプライバシーの侵害が邪魔をして、詳しい内容を聞けずに調査をするのは、探偵として困る結果に結びつくからやめてもらいたいと願うばかりだ。
 けっきょく母親が代表して話す。「私の父が長い間行方不明になってて、捜してほしいんです」
 ガッカリだ。人捜しなんてまっぴらだ。労働力がハンパない。重労働。疲弊するだけ。依頼料は支払ってもらっても見合った仕事ではない。それに満足いく結果ではないのが大半だ。それなりの報酬があっても、御影自身の個人的な解釈と向上心が労働意欲を阻害していく。

「いなくなってもう10年がたちます」
 母親がその年月をくちにして、御影は興味を引かれた。
「10年?」声がうわずった。
 そのせいか、サトミは押し黙った。
「祖父は認知症を患っていたの―」代弁したのが、姉だった。
「認知症ですか。まぁいろいろあってのことかと思うけど、なぜ今になって依頼を?」
「家族だから」こんどは妹が回答をする。
 御影の問いはそうではなかったが、そういわれてしまうと、それいじょうのことは聴けない。それが理由となってしまうからだ。
「もうすこし具体的ななにかがあって、いま捜すことにしたとかですか?」
 御影は大まかな検討がついていた。こういう事例は過去にニュースでも取り上げられているだろう。その枝分かれした話ではないかと推理していた。
 しかし、”家族だから”としかいわなくなった。姉もおなじ回答をしはじめた。一瞬でこのときの流行語大賞にノミネートした言葉を引用している。
「そうね、家族だから」聴いてもいないのに、母親まで同感していた。
 苦笑する御影だった。
「どこかで寂しくて泣いている」と娘はいってハンカチを取り出し目頭を押さえる。
 ほんとうに泣いているのか? 御影は疑いはじめた。だが、母親は娘よりも長く生きている。涙腺が弱くなっているのか、簡単に涙を流しているようにみえた。
「う~ん」
 うなりながらも推察する御影だった。安い涙流しやがって。

 

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