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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<5> 〜定規マン〜

   2015年4月3日  

定規のように几帳面な人っているじゃない?
あれちょっと疲れないのかしら。私ならとてもとても。でも本人はそれが一番いいのよね。
今回は私の友人・木佐木夏子と夏子が街コンで恋した長瀬匠さんのお話。
でもちょっとこの長瀬さん、訳ありみたいよ……?
『定規マン』開店します。

 

定規マン

「ねーあんた考えてないの?」
「なにを?」
「結婚」
 幼馴染みのなっちゃんこと木佐木夏子(きさぎ なつこ)の言葉に、百代さんは生ビールを吹き出しそうになった。なんとかごくんと飲み干すが、鼻に入ったようで痛い。
「結婚ん!?」
 ん!? の言葉尻が跳ね上がるが、夏子はさして面白くなさそうに枝豆を口に放り込んだ。
 夕飯を一緒にと誘われやってきた大衆居酒屋・より子でのことである。店内は涼を求める――というより、月世野町の飲兵衛たちでごったがえしている。カウンターに陣取った二人の両脇にもすでに出来上がった飲兵衛がいて「お、結婚かい、百代さん」などと囃し立てている。
 なんの脈絡があってこの話の流れになったのか百代さんにはさっぱりだったが、趣味が婚活で月世野町主催の街コン――街主催の合コンである――にも絶賛参加中の夏子は、はっと鼻で笑った。話に加わろうとする月世野商工会会長の田所じいさんの光る頭を張って、席に戻す。
「あんたさぁ、一人って悲しくない? あたしらもう三十なわけよ」
 バツイチの夏子の趣味は婚活である。口癖は「彼氏欲しい」。げんに今も、郵便局員とは思えぬほど派手な格好をしている。高校時代のあだ名が「チーママ」という派手な顔立ちの彼女によく似合っていた。
「悲しくはないね。まあ、たまーに寂しいなあとは思うけど。お父ちゃんもお母ちゃんもいないし」
 ほらぁ! と夏子は百代さんの肩をがっしと抱くと、ばんばん胸を叩いた。うぐっと冷や奴を食べた百代さんがむせる。
「今度街コン出ようよ。いい男紹介してあげるから~」
 ら~のあたりに不穏な空気が漂っていて百代さんは嫌な顔をした。
「いいよ私はそういうのは。なっちゃんのだしに使われて終わりでしょ?」
 言うと、きゃっと夏子がはしゃいだ。
「やっだ、分かってんじゃないの。あたしのために一肌脱ぎなさいよ」
 ぐいっとビールを呷った百代さんが珍しく不敵ににやりと笑った。

 

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