幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ノンジャンル

道 第一回 引責

   

二人の絵画の天才が歩んだ道は全く別のものだった。

半世紀に渡る二人の人生を描く、その第一回。

昭和46年、日本画の名門「大雅会」は修行中の弟子による模写横流し・贋作事件に揺れていた。

幹部会はその弟子を処分することを求めたが、会派の中心、師範代を務める小林耕三は「彼は天才。才能は潰さないで欲しい」と訴え、責任は自分の指導力不足にあると言って身を引いた。

「師範代こそ本当の天才だ」と弟子たちは嘆き、師匠、牧野大雅は失意のうちに世を去り、名門大雅会は消滅してしまった。

 

第一章 引責

昭和46年、無敵と言われた第48代横綱・大鵬にも力の衰えが目立ち、夏場所5日目、新鋭の貴ノ花に敗れ、ついに引退の時が来た。

その頃、江戸時代から続く日本画の名門「大雅会」は模写横流し・贋作事件に大揺れに揺れていた。

「去るのか・・」
「はい。兄さんたちとも相談し、これが一番の解決策とご了解頂きました。」
「そうか、これしかないのか・・」

耕三が師の前で正座して深々と頭を下げ、辞去しようとすると、弟弟子たちが広間に押しかけてきた。

「師範代、どうして師範代なんですか!悪いのはあいつですよ。」
「師匠、止めて下さい。こんなことってあるんですか!」

大雅会では、「常に自然に向き合え。」という教えに基づき、弟子入りすると、まずは全員が農作業を通じ、体を鍛えると同時に、自然の素晴らしさ、大きさに感謝する心を学ぶ。
そしてそれが終わると、いよいよ、数え切れない程の模写の繰り返しにより、線の使い方と色の配合等を体で覚えていく。

襖絵画家の家に生まれた小林耕三は、父親が懇意にしていた江戸時代から続く流派「大雅会」の主宰者、牧野大雅に15歳で弟子入りした。

耕三は天性の細やかな線の筆使い、望む光が来るまで何時間でも自然と向かい合える忍耐力と集中力を持っていた。そして、誰よりも朝早くから修行場に出て、そこを最後に去るのはいつも彼だった。その努力のお蔭で本物と見間違えるほどの色を生み出す配合法を体得した。

修業を始めて5年を過ぎた頃からは、数多くいる弟子たちの中でも光彩を放ち、「後を継ぐのは耕三しかいない。」と誰もが認める存在になっていた。

 

-ノンジャンル


コメントを残す

おすすめ作品

エリカの花言葉 第1話 エリカ《孤独》 2

最近の妖魔事情

明日の光

ミニスカサンタでご出勤 前編

妬みの歯車 #2