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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

金にまみれる男 6

   

 籤稿と踏子は緋影のチャンスとやらに、タイのバンコクへ飛び立った。
 金塊を掘り当てるためだと、緋影は説明する。が、その手でチャンスを掴んでくるための誘導だった。もっとも緋影は自分が肉体労働するのを毛嫌いするため、労働者として派遣させたのだ。
 タイにいるソムという緋影の友人からの情報で、それはたしかなものだった。一人独占したいと悪巧みをするソム。労働者として人手が少々いるためと、日本に将来在住したいと願うため、緋影に話をもちかけたのだ。

 籤稿の身辺を改善するために、緋影はひと肌脱ぐ覚悟だった。そのために探偵に依頼する。武条の動向を探るため。そして、武条に法外な金利などを規約どおりにさせるために脅迫する。
 探偵と緋影は武条を尾行し、罠に嵌める策略のまえに、すでに術中に嵌っていた緋影。唐突に横矢は男たちによって取り押さえられる。
 そこに現れたのが差嶽だった。

 万事休すの緋影。しかし緋影の目には、ウレキサイトから起死回生の好機が見えていた。

 

「え?」麻衣は緋影から説明をされた。
「あのふたりこれからタイのバンコクへいくの?」
「そうだ。金塊を掘りにいってもらった。労働者としてな」
 緋影はニヤニヤといやらしく微笑む。
「あらあら、ご愁傷様ね。でも彼女さんは無関係でしょ」
「まぁ、そうだが…、女というのは彼が不幸にみまわれるこういう事態に直面すると、自分のように考える。無関係と背をむけることを拒む生き物だな。まるで悲劇のヒロイン気取りだ。なぜだが同行したがる。あの男ひとりだけでいいものを。これでなにかあっても保障はできないが、もし生きてもどってこられたらしっかりとご褒美をあげることは保障してやるけど」
「ちょっと、レイジ! あなたいつになくあくどい顔になってないかしら? そんな顔をみたことがない」麻衣だけがみた顔だった。
「そうかな」フフフと笑う緋影だった。
「でも、そんな金塊ほんとうにあるの?」
「ああ、そうだ。たしかに浮いた話だ。以前、宝石の調達にタイにいったときのことだ」
 ことの経緯を話す緋影。
「宝石流通といえば、世界最重要中心地、タイ、バンコクだろう。このときそこの団体に所属している親しい友人、ソムさんから話を伺った。彼もまた金にはがめつい男ではある。そして金塊が隠されている場所があると教えてもらった」
 麻衣は疑わしそうに目を細めた。
「ソムさんは団体にこの事実を隠す。どうしても大金をせしめたいと私にだけ言及した。なぜなら将来日本に在住したいと願っているからだ」
「ほんとうに疑わしいわね。そのソムさんってひと」
「まぁそういうな。山分けしようと話をもちかけたのは事実だし。ちゃんと誓約書は交わしてある」
「そんな紙っぺらどうにでもゴミ屑にできるでしょ」
 麻衣のいってることは的を射ていた。外国人がまともに誓約をしたからといって遵守するわけがない。どこへでもさっさと逃げ去ってしまうものだ。
 緋影もその話にはたまらず同意する。が、肉体労働をしなければならない。発掘とはそういうものだ。それを拒む緋影。土や草に直接触れるのを毛嫌いする性格でもあった。
 普段の日常でも公園やガーデニングでさえ興味をもたない引きこもりの鑑定士。ひとの手で作られた物以外に関心がもてないのだ。
”都会っこのもやしっこ”と麻衣にバカにされる。同種のくせにと、反論すると下品にもあかんべーをしてくる。宝生財閥のご令嬢とはけっしておもえない態度だろう。
 そこで緋影は労働者を雇うことに至る。しかし、抜擢な人材がみつからなかった。そこで、ちょうどよく籤稿がおあつらえむきだと判断に至った。
「レイジ、ほんとうに動くのいやなのね」
「きみだってそうだろ。だから代役を立てる。その代わりしっかりと働いてもらえば、見返りは守られる。なんといっても無関係者だから、ソムさんが騙そうとしていれば籤稿さんは力ずくで縛り上げてくれるからな。私にとっては損はない」
「そこまで先読みしてるわけ? レイジのほうが悪徳商法みたいにみえてくるよ」麻衣は呆れていた。
「そうかな。でもこれでは誓約は成立しない。けっきょくソムさんひとりでは身を削るだけの消耗戦だ。ひとりくらいのサポート役がいないとうまくいくものもいかないことになる。そこでソムさんは信頼できる私に話をもちかけてきたのだ」
「ソムさんってひともなんなのかしら。日本に住みたいってなにを目的に?」
「きっと、利益になるからだろう。日本という国がな」
「もっと稼げると?」
 緋影はうなずいた。その分、麻衣は不機嫌になっていた。

 

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