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道 第五回 悪友、栗原と柴崎

   

洋画家の栗原陽一朗と画廊社長の柴崎繁は美術界を表と裏で牛耳っている。

美術教師木下正則の妻、久美子は「ご主人のためになる」と柴崎に手引きされ、栗原に女にさせられた。勿論、その見返りとして夫の正則は美術展の入選を与えられた。

栗原と柴崎は腐れ縁の悪友だが、柴崎が金儲けに繋がるなら手段を選ばない本物の悪党、一方、栗原は絵には純粋な心を持っている。

今般、柴崎が中心となって運営する美術展「飛翔展」が二十回の記念開催となる。そこで、柴崎は応募資格を高校生まで広げ、高校教育界に支配領域を伸ばそうと企んでいた。

 

第七章 久美子

平成16年10月。東海道新幹線が開業40周年を迎え、テレビではセレモニーの様子を伝えている。

  ああ、いい天気。
  こういうのを清々しい秋晴れって言うのかな。

木下久美子は3歳年上の夫、それに中学生の男の子との三人で暮らしている。

夫と子供を送り出した後、洗濯物をベランダに干している時、ポケットの携帯電話が鳴った。出なくても着信音だけで誰からのものか、要件さえも直ぐに分かる。

「はい、久美子です。」
「家に来てくれ。」

夫は高校の美術の教師を務めているが、小さな絵画展では入選の常連で、今も画家として生きていく夢を捨てきれない。

久美子は勤務先の画廊「アートサロン・シバサキ」のオーナー、柴崎から日本洋画界に大きな力を持つ、栗原陽一朗を紹介されたのは5年前、33歳の時だった。

「木下さん、ご主人はいくつになりますか?」
「はい、今年は年男なので36歳になります。
 何とか入選させてあげたいと思っています。」
「いい人がいるから紹介してあげよう。きっとご主人の望みが叶いますよ。」

柴崎が案内してくれた栗原の屋敷は広い敷地の中に、門をくぐると正面に木造二階建ての母屋が、そして中庭を挟んで奥にアトリエがあった。アトリエと言っても、久美子の家よりも広く、「いつかは主人もこうなれたら」と夢を抱かせるには十分なものだった。

 

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