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道 第六回 岐路

   

雄介は応募する美術展で次々と特選に選ばれ、両親や啓子を喜ばせる。

一方、啓子の父の耕三は「今はしっかりと勉強させ、心を鍛えるべき」と忠告する。また、「こういう時にはいろんな奴が近づいてくる」とも忠告する。

だが、次の「飛翔展」で特選を勝ち取れば、美大に推薦入学できると聞き、啓子は父の忠告よりも「飛翔展」を選択した。

しかし、その美術展には油断できない相手が絡んでいた・・

 

第九章 父の忠告

「啓子、あの子、今日も来ているな。」

珍しく父の耕三が話し掛けてきた。

「あら、お父さん、区切りがついたの?」
「まあ、なんとかってとこかな。それより、あの子?」
「雄介君のこと?」
「そうだ、雄介君だ。熱心だな。
 毎日、工房の側で絵を描いてるよ。」

笑顔などめったに見せない耕三だが、なぜかニコニコしている。

「どうしたの?お父さん、嬉しそうだけど。」
「いやいや、うちには男の子なんかほとんど来ないからな。
 あの子、ずっと水彩画だな。」
「お父さんが絵の話をするなんて、珍しいわね。
 私が中学生の頃以来よね。」
「だって、高校生の頃には本格的に画家になりたいって言ってたから、そんな娘に絵の話なんか出来ないだろう?
 私なんか素人が口を挟むことなどなかったからな。」

それは確かにそうかも知れないが、父とは絵のことでもっと話をしたかった。

「そうかもね。そうそう、雄介君のことね。そうなのよ。
 油絵の道具を揃えてあげたんだけど、ずっと水彩画なのよ。」
「そうか、それじゃあ日本画がいいかな。」
「えっ、どうして?」
「正月に初めて会った時に・」
「いやだあ、お正月から仲良くなっていたのに、名前も知らなかったの?」
「いつも話しているんで、今さら名前を聞くのもと思っていたら、聞きそびれてしまったんだ。まあ、二人で話すんだから、名前なんて要らないからな。」

 

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