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SF・ファンタジー・ホラー

サクリファイス クロニクル編 END

   

シャルルの物語は幕を閉じる。
そして、作家が提案したのは新聞ではなく本にすることだった。
ロザリーナとの再会を夢見た彼は、再び行方を晦ますのだった。

サクリファイスと呼ばれる怪物を描いたゴシックダークオカルトファンタジー!
クロニクル編、完結!!

※次回より第二部として、舞台を現代に移し、まだまだ続きます。

 

 ごうごうと燃え上がる炎は、僕とエイハブの間に炎の壁を作った。逃げ場を失った彼等は扉や窓を破ろうと手当たり次第に叩きまくるが、ロザリーナの神の力で固く閉ざされたそれらは鉛の壁を思わせた。
 僕は階段を駆け上がり、ロザリーナの隣に立った。
「彼等は、煙を吸ってもう動けないよ。僕等は逃げよう」
 だが、ロザリーナは言った。
「シャルルは、クレメンティーナの肉体を持って逃げて。私は、ここで彼等の最後を見届けるわ」
「どうして?」
「皆、人を甘く見過ぎなのよ。私は、この力でこの物語を最後まで見届けるわ」
 炎はエイハブ達を焼き始め、ロザリーナと僕の足元まで迫ってきた。彼女は、彼等と共に焼け死ぬ気だ。真っ黒の人影が、炎を纏いながらフロアをのたうち回るのを見ていた。肉の焼ける匂いが鼻を付き、空間を切り裂く悲鳴が閉ざされた空間に響いた。
「シャルル、クレメンティーナからの伝言よ。私を、お願いします。と。彼女は、共にアーロンと眠る道を選択した。それは、永遠かもしれない。それがもし永遠であっても、彼女に後悔はない。だって、彼女はアーロンを心の底から愛しているから」
 アーロンの柩の窓が閉じられた時の事を、思い出した。あの時、ひらひらと舞っていた蝶はクレメンティーナのプネウマだったのだ。
 僕は、ロザリーナの肩をそっと抱き寄せた。
「もう一度、死のうかな」
 炎は、僕とロザリーナと共に、屋敷ごと呑み込んでいった。

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