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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<7> 〜さすらいボールペン〜

   2015年4月24日  

あなたならボールペンでなにをする?
今回は、私の弟とも言える変わり者・城ヶ崎 累とそのお兄さん重さんのお話。累はボールペン画の才能があるんだけど、昼夜問わず出歩いてしまうの。ちょっと過保護な重さんの心痛が思いやれるわ。でも、累は累で目的があって……
『さすらいボールペン』開店します。

 

さすらいボールペン

 城ヶ崎 累(じょうがさき るい)は変わり者の少年だ。一応、高校には籍を置いているが、ほとんど来たことがない。では不登校かというとそういうわけではなく、気が向くとふらっとやってきて授業を途中まで受けて帰っていく。それなりに友人もいて、小学校からの幼馴染みには「あいつは、まあ、あんなだからよ」と慰めなのか、諦めなのか分からないことを言われている。
 家族もとりたてて口やかましいわけではなく、あくまで累の好きなようにさせていた。
 そんな彼が昔から入り浸っているところがある。
 モモヨ文具店だ。
 前店主の栄治さんが店を仕切っていたときから累は、日がな一日入り浸っては絵を描いたり、店を手伝ったりしていた。百代さんとも仲が良く、姉と弟のようでもあった。百代さんは累少年にはざっくばらんに話をし、累がやって来ると追い出しもせず、彼が得意とするボールペン画を居間でよく描かせていた。昼寝も泊まっていったことも一度や二度ではない。
 そんなだから余計に学校に来なくなるんですよ! という担任の言葉に耳を傾けず、累は今日も今日とてモモヨ文具店にやってきた。
 スケッチブックの入る大きなトートバック片手に累が引き戸を開けると百代さんは腕を組んで、唸っていた。累が、よっと手を挙げると百代さんも、よっと手を挙げる。
 九月に入ってすぐのことである。
 累は堂々と普段着で、モモヨ文具店に来たのはちょうど正午だった。
「いいとこに来たじゃん。ご飯食べた?」
「まだ」
「じゃ、食べて行きなよ。オムそば。累、好きでしょ」
「仕事はいいの?」
 累がどこか眠たそうな目で百代さんの手元を見ると、ううむと唸った百代さんは、ぺらっと手元の紙をあげてみせた。小柄な累がととっと歩み寄ると、売上票とあった。売り上げ合わなかったの? と目顔で尋ねると百代さんは神妙に頷いた。
「なんとしても合わないのよね」
「合わせてあげようか? 食事のお礼に」
「おおっ、累の得意の暗算かー。頼もしいなあ。でもま、いいよ。先、ご飯食べよう。ちょうど一息入れたかったしね」
 おいでおいでと促され、累は奥の居間へと通された。台所に立った百代さんと一緒に、オムそばを作る。百代さんが野菜と焼きそば麺を炒めている間に、累がふわっふわのオムライスを作り上げる。ウェディングドレスのドレープのようにふわっと作られたオムライスは一種の芸術だった。

 

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