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SF・ファンタジー・ホラー

幻幽綺譚<1> 一休とんち話

   

 新しいシリーズです。
 え、似たようなタイトルを見たことがある?
 そんなはずはありません。
 見たことがあると思うなら、あなたは幻幽な冥界に引きずり込まれているのです。

 

 将軍足利義持は、板の間に控える若い僧侶を見ると、何となく不快になった。
 ここは、京都北小路室町。
 広大な邸宅にある謁見の間で、足利義持は、最近評判の若い僧侶を謁見しているのだ。
 高名な武将たちが並び、いちばん奥に足利義持がいる。
 一休という名の若い僧侶は、その満座の席の真ん中に座っている。
 型どおりに大人しく座っているのだが、その顔は神妙ではなかった。
「将軍、なにするものぞ」という覇気を隠していない。
 僧侶ならば、もう少し謙譲があってもいいのではないか、と足利義持は思ったのだ。
 だが、その感情を顔に出すことはない。
 さすがに、武家の棟梁、人の上に立つ人物なのであった。
「そのほう、一休、とな?」
 一休は、わずかに頭を下げて肯定した。
 そのぞんざいな動作が、足利義持の心証を、また悪くした。
「当世、まれにみる学才の持ち主、と聞いておる」
「それほどではございません」
「ほう?」
「一心に修めれば学は身に付くもの。昨今の者たちは、修行が足りないだけです」
「そうか……。だが、学べば誰でも学が成就する、というものでもあるまい」
「それは、そうでしょうね」
「五山の老師の方々が、そのほうは衆に秀でた才がある、と申しておる」
「あえて、否定はいたしません」
「さりながら、人の話ほど不確実なものもない。わしは武人じゃ。この眼で見たことしか信を置かない」
「よいお心がけで」
「そのほうの才を見せて欲しい」
「されば、『碧巌録』の神髄につきまして講義を申し上げます」
「そういう難しいことは分からん」
「では、臨済禅の成り立ちから。そもそも……」
「あ、待て待て。禅の話では、退屈じゃ。もそっと面白い事はないか。そちの才が分かればよいのじゃから」
「私の才覚をお見せするのは簡単ですが……、そうですね……」
 一休は、しばし考えた。
「あれを……」
 一休は、将軍の後ろに眼を向けた。

 

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