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道 第八回 勇み足

   

美術展で特選続きで慢心があった雄介は、柴崎に呼び出され、飛翔展での入選とアートサロン・シバサキとの専属契約を持ちかけられた。

そのことに雄介の伯母美恵子が気が付き、啓子に相談してきたことから大騒ぎになっていた。

普段はめったに人前にでない父、耕三が雄介を「一人でなんでもできると思ってはいけない」と諭し、啓子には不正の疑いがあるから飛翔展への応募取りやめと契約を辞退するよう命じ、それを前田画廊を通じて行うよう指示した。

啓子が父にもっと詳しく話して欲しいと求めようとすると、そこに咲が現れ、「あなたも本当のことを知るべきだ」と告げた・・

 

第十三章 勇み足

「雄介君、そんな勝手なことってある?」
「いや、だって、遊びにおいでって言われただけだったから、そんなことになるなんて・・」

2月末、伯母の恵美子が雄介を連れて啓子のところに相談にやってきた。

「雄介、ちゃんと話をしなさい。啓子さんが怒るのも当たり前よ。
 こんなものをもらってきちゃって。」

2週間程前、雄介は柴崎から電話をもらった。

「浅野雄介君かな?」
「はい、そうですが・・」
「よかった。いや、飛翔展のことで電話したんだよ。私は・・」

雄介の評判を聞いて話がしたくなったので、一度遊びにおいでとの誘いの電話だった。

「締め切り前だから、君が私のところに来たと分ると、いろいろ言われるから、誰にも言わないでいらっしゃい。」
「内緒で?」
「そう、内緒だよ。
 それから、君が描いた絵を何枚か持って来てくれ。」

そして、柴崎の事務所に行くと、持っていった絵の中から一枚を選ぶと、「飛翔展はこれを応募作品としよう。」と言って、契約書類を手渡されたということだ。

「どうして知らせてくれなかったの?」
「だって内緒って言われたから。」
「それはね、みんなに言わないでってことでしょう。
 主催者だって電話で言われても、その人が本当に主催者なのか分らないでしょう。」
「本当にね、啓子さん、ごめんなさい。」
「謝って済む問題じゃないのよ。作品まで出しちゃって。
 それにこんな契約書までもらってきちゃって、雄介君、どうすのよ!」

雄介が落ち着きがないことを心配して何かアドバイスでもしようかとしていた矢先の出来事に、親の心、子知らずというより、憤懣やるかたないと言った気持ちで、啓子は爆発しそうな勢いだ。

 

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