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道 第十三回 改革、そしてそれぞれの恋

   

平成18年8月、県美術連盟の改革は遅々として進まなかった。

今や改革の中心となった副島は「新しい息吹」と題し、若手画家たちに新聞紙上で意見を述べる機会を設け、啓子にも意見を書くように求めた。
絵画教室の仲間の妙子に励まされながら、啓子はアメリカ留学時に学んだ、芸術に対し自由に意見を述べる素晴らしさを文章にまとめた。妙子は「素晴らしい文章だ」と褒める一方、副島と恋が芽生えている啓子をひやかしながらも応援した。

「改革」に取り組んでいるのは美術連盟だけでなく、雄介もそうだった。耕三は持てる知識、技術をすべて雄介に伝えた。しかし、満足するかどうかは、雄介に任せる耕三流。雄介は飽くなき向上心で修行にはげんだが、彼にも恋の季節は訪れていたようだ。
耕三は言う、「恋はいいが、女に溺れてはダメ。普通の生活の中に感動がある」と。

 

第二十章 美術連盟の改革

平成18年8月になっても県美術連盟は組織の立て直しは遅々として進まなかった。

理事クラスは総入れ替え、委員もかなりの数が交替したが、やはり画廊間の駆け引きになってしまい、「素晴らしい才能を見つけ、伸ばそう」、「県民の皆様に絵を楽しんで頂こう」という連盟の本来の目的に向かった改革は何も進んでいなかった。

前田社長から後を託された副島は改革委員会の座長であったが、この状況に大きな危機感を覚え、新たな対策を打ち出すことにした。

「啓子さん、早速で申し訳ないけれど、あなたの絵に対する考えを書いて欲しいんだ。」
「いきなり、止めてよ、副島さん。」
「いや、もう決めたんだ。このままでは何も変わらない。
 やらなきゃダメなんだ。」

そう言うと、副島はカバンから先週開かれた改革委員会の討議資料を取り出した。

「改革を年長者に任せてはダメだ。若手画家が勇気を持って意見を述べなくてはいけない。だから啓子さんを含め、県内在住の若手画家たちが順番で新聞に意見を発表することを会議で決定した。新聞も是非やりたいと言ってくれてる。
 地域版だけど『新しい息吹』と題した10回連載企画を作ってくれたんだよ。どうも、ベテランの文芸部記者たちは柴崎に毒されていたようだよ。だから、新聞も必死なんだ。
 啓子さん、あなたもやらなきゃダメだよ。」

副島のことは、前田社長の右腕として、ビジネスセンスは凄い人だとは思っていたが、こんなに熱意がある人とは思っていなかった。

 

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