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SF・ファンタジー・ホラー

サクリファイスⅡ 完結編4

   

久しぶりのシャルルとシンディの時間。
シンディはシャルルに、幼い頃から見る不思議な夢を打ち明ける。

オカルトファンタジー、第二弾!

 

 シンディは、ウエイトレス仲間から教えて貰ったぼろアパートの前で立ち止まっていた。ぼんやりと見上げると、昼間なのに不気味な外観だった。
「どうかされましたか?」
 不審に思ったジャネットが、買い物バッグを下げてシンディに声を掛けた。思わず、小さな悲鳴がシンディの口から漏れた。
「ごめんなさい。知り合いが住んでいるアパートかも知れないって聞いて」
「誰かしら?」
 親切心を沸かせたジャネットが疑問符を投げた。
 シンディは少し考え、何となく買った小さな花束をジャネットに見せた。
「これを、届けたくて。シャルルって言う人、ここに住んでいるのかしら? 金髪で緑の眼をしてるわ」
「女の人みたいな?」
 ジャネットが続けて、シンディが頷いた。シンディの顔から、笑みがこぼれてしまう。
(やっぱり、ここに住んでいたんだ)
 そう思った時だった。
「貴女、シャルルとどういう関係?」
 ジャネットに聞かれ、シンディは再び返事に困ってしまう。そして、とっさに嘘を吐いた。
「私は、シャルルの友人。彼が、今日誕生日みたいだから」
「へえ」
 ジャネットが、わざとらしい声を上げた。
 シンディは、出直そうと思った。なんだか、事態が複雑になっているような気がしたから。シャルルがこのアパートに住んでる事さえわかれば、なんとかなるだろう。そんな、頼りない考えが頭の中をいっぱいにしていた。
「また、出直します」
 言ったシンディをジャネットが引き留めた。
「待って。呼んできてあげる」
 シンディの返事も待たずに、ジャネットは走り出した。
 暫くして、シャルルが現れた。
「やあ、シンディ。僕の誕生日は、今日じゃないよ」
 笑うシャルルを見て、シンディは頬を赤くした。
「ごめんなさい。最近、カフェでお話出来なかったから、ここに住んでるかもって噂で聞いて来ちゃったの。これ、よかったら貰って。お礼」
 シンディが小さな花束を、シャルルに差し出した。
「よかったら、貴方の誕生日を教えて貰えるといいんだけど」
 シャルルは、笑った。
「いつだったかな。そんな昔の事は、覚えてないよ」
 シンディの顔が、悲しげに歪んだ。
 シャルルは、思い出していた。
 それは、ずっと遠い昔、五百年前の事だ。シンディがカサンドラ隊員で、シャルルがアーロンのスパイとして毎晩戯曲を披露しに、カサンドラ隊の泊まる宿に出入りしていた時。軽蔑されるシャルルに、唯一花束を差し出したのがシンディであった。
「シンディは、今日は何故花を?」
「シャルルに、似合いそうだなと思って」
 言葉に詰まった。久々に話す機会が出来たのはいいが、何を話そうかと悩んでいた。口火を切ったのは、シャルルだった。
「少し歩こうか」
 殺風景な道を二人、ゆっくり歩き始めた。

 

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